2012.06.20

【明治杯全日本選抜選手権・特集】男子グレコローマン96kg級・大坂昂(早大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫)

優勝を決め、早大・太田拓弥コーチと喜ぶ大坂

 今年の明治杯全日本選抜選手権は、ロンドン五輪の代表選手が出場していないこともあり、例年の大会に比べると出場メンバーの豪華さに欠けていたのは否めないだろう。それは、出場した選手たちが最も感じていたはずだ。男子グレコローマン96㎏級で初優勝した大坂昂(早大)も、そう感じた一人。

 準決勝で全日本選手権2位の山本雄資(警視庁)を下し、決勝は昨年の世界選手権代表で全日本選手権3位の有薗拓真(ALSOK)を下しての優勝だけに、価値ある優勝だと思われるが、同級の五輪代表の齋川哲克(両毛ヤクルト販売)が出場していないのだから、優勝してもナンバーワンを名乗ることに引け目を感じてしまうのは当然だろう。

 大坂は「オリンピック代表(齋川)が出場していない大会なので、正直なことろ、優勝と言われても実感が湧きません」と話した。しかし、そう口にできるだけ、自覚が芽生えたのを実感している自分がいたのも、また確かだ。

 「3年生になって、精神的にたくましくなったようにも感じています。自分が引っ張らなければ、自分が勝たなければという気持ちがあったから、集中力を切らすことなく闘えて優勝できたのだと思います」。この気持ちさえあれば、前向きに突き進むのみ。

 早大は5月の東日本学生リーグ戦は日体大に敗れて優勝を逃した。“本職”はグレコローマンの大坂だが、昨年の全日本学生選手権では両スタイルで優勝しており、フリースタイルで行われるリーグ戦でのV逸は悔しい限り。その悔しさを晴らし、この後は「インカレ(全日本選手権)では勝って、全日本選手権でも勝ちたい」ときっぱり。

 今が伸び盛り。今大会で山本、有薗を下したことで、世代交代の一端は果たせた。名前の「昂(あきら)」とは、「高くなる、上昇する」という意味の字。4年後のリオデジャネイロ五輪では、日本のトップに立つ番だ。