※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫)
「最後の早大戦は2年生が軸となって勝利をつなげてくれた。今後につながる優勝だったと思います」。晴れやかな笑顔を浮かべながら、日体大の松本慎吾監督は総括した。
5月13~15日、東京・駒沢体育館で行われた2019年東京都知事杯東日本学生リーグ戦は、日体大、山梨学院大、拓大の三つ巴の争いになり、リーグ最終戦で早大を破った日体大が7年ぶり通算27度目の優勝を果たした。
「ポイントとなったのは、決勝リーグ初戦の拓大戦。あそこでしっかりとした形で勝ち切れたことがよかった。最終的には、そこが優勝を決める要因になったと思う」
最も盛り上がったのは、リーグ最終戦の最終試合、125㎏級の仲里優力(日体大)-山崎祥平(早大)の一戦だ。「日体大が勝てば、日体大の優勝。落とせば拓大の優勝」という瀬戸際で、2年生の仲里は第2ピリオド残り30数秒というところで2-1と逆転。最後は大応援団の「5、4、3、2、1」というカウントダウンとともに、母校に価値ある一勝をもたらした。
仲里はマットに上がる時、これから始まる一戦がリーグ戦の雌雄を決するという大一番であることは把握していたという。「団体戦は個人戦と違い、チームの勝ち負けに関わってくる。なので、自分の責任を感じながら、マットに上がりました」
4年生にとっては最後の団体戦ということも、仲里のモチベーションにつながった。「個人戦は、負けたとしても自分の責任で次戦にいかすことができる。でも、4年生の先輩たちのことを考えたら、次の試合にいかそうというレベルの問題ではない。団体戦は自分の負けの責任が全然違う」
天下分け目の山崎戦の直前、松本監督からは「楽しんでやってこい」という声をかけられた。「だったら自分のスタイルをいかして闘ってこよう、と思えるようになった。楽しみながら試合をすることができました」
一方、松本監督に“影のMVP”を選んでもらうと、65㎏級で4年の上野裕次郎を選んだ。「(山梨学院大の榊大夢戦も早大の鈴木歩夢戦も)勝ちにはつながらなかったけど、日体大の“攻めるレスリング”を最後まで貫いてくれた。そういう姿勢が最終的に団体優勝につながったんだと思います」
単なる勝ち負けだけではなく、闘う姿勢も評価する-。そういった指導も日体大優勝の原動力となったのだろうか。上野にその旨を告げると、「自分のところが勝負と言われながら、1回も勝てなかった…」と振り返る。「結局、強い後輩やキャプテンの新井(陸人)君に助けてもらったりしていました。優勝することができたのでうれしいけど、自分はしっかりとチームに貢献することはできなかった。もっと強くなって次は貢献できるようにしたい」
もっとも、松本監督の目標はリーグ戦の優勝ではなく、「世界で活躍できる選手を作ること」。ポイントゲッターとなった仲里は高らかに宣言した。「世界で勝てる選手になりたい。まずは目の前にある世界ジュニア選手権(8月、エストニア)でメダルを獲りたい」。
攻めるレスリングで、日体大選手が勢いづくか-。