※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)
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JOC杯ジュニアオリンピック男子96kg級は、昨年高校生三冠王の山本康稀(埼玉・花咲徳栄高)が大学生が主戦場となるジュニアに出場し、準々決勝から格上の大学生相手に奮闘。3試合ともにフォールで勝ち、決勝戦では昨年優勝の馬場貴大(専大)からも鮮やかな投げ技一閃で勝負を決めた(右写真=青が山本)。
1月の高校関東選抜大会で山本が掲げた今年の目標は「高校四冠王」だった。「12月に肩の手術をして、そのためにJOC杯の予選に出られなかったんです。五冠王を目指したかったけど、その分、他の大会で頑張ります」と話し、世界ジュニア選手権につながる大会に出場できない未練を断つために、敢えて四冠の目標を掲げた。
だが、高校2年生で高校三冠を制した山本にチャンスが与えらえた。特例で出場が認められたのだ。吉報は4月上旬に伝えられ、「本当にうれしかった」と山本。同高の高坂拓也監督も「もらったチャンスを生かすために、一生懸命練習していた」と振り返る。
■世界ジュニア選手権は辞退してインターハイ優勝を目指す!
同世代にライバルがいない山本にとって、不足なしの相手がそろうジュニア世代。フリースタイル96kg級には昨年王者の馬場や、高校時代に山本を秒殺している桜井聡紀(中大)らの名前がズラリと並んだ。高坂監督は「厳しい山に入ってしまった」と心配したようだが、山本は違った。まるで強い選手との試合を楽しんでいるかのように、マットを縦横無尽に駆け回った。
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高速タックルから組み付いて、「得意技なんで」と必殺の投げ技で大学生を次から次へと転がした。高坂監督は「ふだんは強い相手とは練習できません。大学生に交じっての試合を勝ち抜いたことで、いい練習になってしまった」と、この大会での山本の成長に目を細めた。(左写真=カデットで優勝したチームメートとともに。左からグレコ76kg級・池澤邑樹、山本、フリー50kg級・中村倫也、フリー100kg級・山本晋也)
シニアで実施されているジュニアの7階級(55kg級以上)に限ると、制覇した中で高校生は山本のみ。世界ジュニア選手権(7月下旬、ルーマニア)の出場権を手に入れたが、「インターハイと日程が近いので、出場しないと思います」ときっぱり。3月の全国高校選抜選手権が東北大震災の影響で中止となった今、やはり五冠を取る夢は消えてしまったが、高校のラストシーズン、山本の最大の目標はインターハイで勝つこと。「世界ジュニア選手権の代わりにアジア・ジュニア(選手権)に派遣されれば行きたい」と抱負を語った。