※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
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《勝者の素顔=JWFフェイスブック・インスタグラム》
(文・撮影=布施鋼治)
「今回の世界選手権では、一戦一戦しっかり闘い、まずは1日目に決勝まで進出することが目標の第一段階です」。昨年の世界選手権(フランス)で初出場ながら女子55㎏級を制した奥野春菜(至学館大)は、今年は53㎏級に出場。2階級制覇に挑む。
ただ、追われる立場で開催地のハンガリーに行くつもりはない。「アジア大会で負けてしまっているので、挑戦者というか、ディフェンディング・チャンピオンであると
8月のアジア大会(インドネシア)は、優勝候補と期待されながら、準決勝でパク・ヨンミン(北朝鮮)に7-6と1点リードし、守りに入ってしまったところで1点を取られた。7-7のラストポイントによって痛恨の敗北。奥野は勝てた試合だったと唇をかんだ。「最後は守りに入ってしまい,足が止まり、上半身だけで闘っている自分がいました」
このようなパターンの試合は初めてではない。高校1年生の時に出場した世界カデット選手権(スロバキア)でロシアの選手に負けた時もそうだった。「あの時はポイントを取られ、取り返して僅差で勝っている状況でした。でも最後守ってしまい、ポイントを取られて負けてしまった」
奥野は、今回も気持ちに余裕がなくなってしまって「守らなければ」という思いが先に出てしまったと打ち明ける。「普通、外国人選手は結構ガツガツ攻めてくることが多い。でも、パク・ヨンミンは構えがずっと低くて、頭を落としても崩れない。ずっと守っている感じだったので、想像していたよりやりにくかったことは確かですね」
2017年4月以降、奥野は無敗の快進撃を続けていた。昨年の世界選手権では決勝まで無失点で勝ち上がり、決勝でも手足の長いオドゥナヨ・アデクオロイェ(ナイジェリア)を僅差で料理し成長ぶりを見せつけた。1年前の自分の闘いぶりを奥野は何も考えないで闘っていたと振り返る。
「とにかくタックル。自分から先に攻めていたので優勝することができたと思う」。あの時のレスリングはどこにいったのか。アジア大会から帰国後、奥野はレスリングに対する自らの姿勢を改善しようと努めている。
「この間の明治杯(全日本選抜選手権)の時からそうでしたが、試合になったら自分からタックルでポイントを取るというのがなかなかできなくて…。取ろうと思えばバンバンとれるのに、攻め切れていなかった。今は自分からしっかり攻め、最初から点を取る練習をしています」
世界選手権ではパク・ヨンミンと再戦する可能性が高い。奥野も雪辱戦を想定している。「同じ技にかからないようにしながら、仮に先にポイントを取られても、焦らないで自分からしっかり仕掛けられるようにしたい」
アジア大会の悔しさを忘れないように、合宿所の自室にはその時の銅メダルが飾られている。