※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=八木賢太郎、撮影=増渕由気子)
インターハイの男子個人戦92kg級の決勝は、山崎祥平(茨城・土浦日大)が昨年の三冠王者・白井達也(千葉・日体大柏)を退けて初優勝した。
昨年12月のJOC杯関東地区予選、今年6月の関東高校大会と白井には2連勝中だった山崎。一方、全国高校選抜大会を2連覇した白井も、そう簡単に同じ相手に3連敗するわけにはいかない。意地と意地とがぶつかり合った試合は、前回対戦の7-1から一転、テクニカルポイントなしの2-1というロースコアに。
白井の押しの強さに「完ぺきに押し負けてた」という山崎だが、「今までだったらあきらめてましたけど、最後のインターハイだから絶対に勝ちたいという気持ちがあったので、なんとか意地を見せて最後まで粘りました」と競り勝った。
河原﨑諒監督は、そんな山崎の優勝を「勉強と部活の両立を目指して、強い気持ちで頑張ってきてくれた成果」と称えた。山崎は国公立大や難関私立大を目指す「特進クラス」に通い、一般受験での大学進学を目指して勉強中。河原﨑監督によれば「今回の移動の車中でも勉強をしていた」という。
練習環境も決して恵まれてはいなかった。土浦日大は、1984年ロサンゼルス・オリンピック金メダリストの富山英明・日本協会常務理事(日大教)や1988年ソウル・オリンピック金メダリストの小林孝至・国際武道大学監督らを輩出した古豪だが、現在は25歳の河原﨑監督が率いる若いチーム。部員は6名で、山崎の同級生2人は高校からレスリングを始めた初心者。中学2冠王だった山崎といえども、今年4月のJOC杯で優勝するまで高校のタイトルには縁がなかった。
そうした環境の中でも、独自に調べたトレーニング方法を取り入れるなどして常に基礎体力作りに励んできたことが、今年に入っての躍進につながった。「練習時間があまりとれないので、短い時間の中でいかに効率良く効果的な練習ができるかを、ずっと研究してきました」と語る山崎の姿は、まさに“リアルIQレスラー”。河原﨑監督も、「マイペースで図太いところがある反面、納得いかない時はとことん突き詰める山崎だからこそ、成し得たこと」と、その努力を評価した。
土浦日大にとって1996年の太田亮介以来22年ぶり、茨城県勢としても5年ぶりとなるインターハイ制覇。河原﨑監督は、「ここに至るまで、OBや茨城の先生方がいろいろと協力してくださいました。山崎が優勝できたのも、周りの人たちがみんなで彼を支えてくださったおかげです」と感謝の言葉を述べた。
来年の茨城国体に向けて、今回の“茨城復活”は間違いなく追い風になるだろう。