※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
成國と加賀田。両端は成國の両親
成國は男子史上5人目、加賀田も女子史上5人目の偉業で、成國は最優秀選手賞となる沼尻直杯を、加賀田は茨城県知事賞を受賞した。
3連覇が複数人出るのは史上初の快挙。ともに所属は東京・ゴールドキッズで、同クラブから同時に3連覇が誕生するのは、この先、あるかどうかという記録づくめの大会となった。2人は秋の全国中学生選抜選手権も2連覇中で、夢の“6冠”に王手をかけた。
■JOC杯初戦敗退で階級アップを決意・・・成國大志
成國は今大会、昨年から2階級アップの53㎏級に挑んだ。昨年3連覇を達成した藤波勇飛選手は、記録を狙って7kgの減量に耐えての栄光で、成國自身も「いい参考になった」と話していた。しかし、自身が取った3連覇の道のりは“階級アップ”だった。
きっかけになったのは4月のJOC杯ジュニアオリンピックだった。世界カデット選手権の出場資格がかかった同大会に、成國は将来、専門スタイルとしたいグレコローマン46㎏級に出場したが、初戦敗退に終わった。
決勝で闘う成國大志
成國も「もともと減量すると調子を崩すことが多かった。JOCの敗因も減量でスタミナが落ちて動けなかったから、今回は減量なしで挑みたかった」と振り返る。
成國の父、隆大さんがトレーナーの資格を持つことも手伝って、地道にビルドアップに励んだ成國の身体は53㎏級にふさわしいものだった。試合が始まれば、階級アップの不安はどこへやら。タックルや飛行機投げがさえて、準決勝以外はフォールかテクニカルフォールでピリオドを終わらせるなど圧勝続き。
決勝は矢後公誠(千葉・柏二)が相手で、「3歳の時の幼児大会で、0-10で負けたことがある」(成國監督)という以来の対戦だったそうだ。10数年ぶりの対戦を2-0(1-0,TF7-0=0:48)でストレートで勝って3連覇を決めた。
優勝後、「勝って当たりまえ、3連覇できるだろう、と周りに思われてしまって、プレッシャーがあった」と心境を吐露したが、秋の全国中学生選抜選手権に向けては、「6冠を取れるように頑張ります」とキッパリ話した。
■同門対決を制して3連覇決める・・・加賀田葵夏
決勝で闘う加賀田葵夏
これにより決勝戦は、浅倉栞南(千葉・柏二)とのゴールドキッズ同門対決となってしまった。ともに夏の世界カデット選手権出場を決めており、今回はどちらかしか優勝できないという状況でも、ともに納得して闘うことができたそうだ。
残る目標は成國と同じく秋の全国中学選抜大会の優勝。「6冠を目指して攻めるレスリングをしたい」と言い切った。