2012.06.12

【沼尻直杯全国中学生選手権・特集】優勝率.750! 埼玉栄は出場4選手中3選手が優勝

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)

左から野口監督、中村、山崎、吉村

 沼尻直杯全国中学生選手権で、出場4選手のうち3選手が優勝―。驚異的な勝率を誇ったチームが埼玉・埼玉栄だ。野口篤史監督が「男子3人、女子1人のエントリーで、決勝に男子2人、女子1人の3人進みましたが、全員勝ってしまうなんて奇跡」と、うれしい悲鳴を上げた。

 優勝候補として臨んだ昨年男子66㎏級優勝の山崎弥十朗が下馬評どおりに勝って2連覇を達成。昨年42㎏級3位だった男子47㎏級の吉村拓海と女子37㎏級の中村未優も勝った。

 野口監督は「勝因は技術よりも選手の意識の高さ。埼玉栄の練習方針は腹八分目がポイントなのですが、そこからみんなが意欲的に各自考えて取り組んでくれる」と、中学生が埼玉栄高の練習に自分の意思で参加していることを話した。

その中には、「練習をしすぎてしまうくらいで、どちらかというと私が練習をセーブしているくらい」と、試合前の調整も“うれしい苦労”があったほどだ。

 今大会3選手が優勝し、野口監督があらためて手ごたえをつかんだことがある。忠実な攻撃スタイルだ。吉村と中村はタックルを武器に前に出るレスリングで優勝をもぎ取った。「うちのクラブはカウンターをやりません。カウンターは後でいくらでもできますから」という指導方針が実を結んだと言えよう。

 中学生の意識が高まったのは、前週に行われた関東高校大会で、高校生が複数の階級で優勝したことが大きかった。「高校の先輩たちのように僕たちも頑張ろう」という気持ちが全国大会の舞台で花開いた。

■埼玉栄の次世代のエース、山崎弥十朗が2連覇

 男子66㎏級は山崎弥十朗が決勝で吉田隆起(和歌山・湯浅)相手に第2ピリオドでフォールを奪って大会2連覇を決め、自身最後の全国大会に花を添えた。

2連覇を達成した山崎弥十朗

 昨年は2年生でこの階級を制覇したが、決勝の試合内容は第1ピリオドをラストポイント差で落とし、第2、3ピリオドをクリンチ勝負で逆転しての優勝だった。だからこそ、今年は試合内容にもこだわっていたのだが…。

第1ピリオドは決め手を欠いてクリンチで落とし、気持ちを切替えて臨んだ第2ピリオドの序盤、相手の首投げを受けて3失点したが、受身を取った反動で相手との身体を入れ替えて、わずか46秒で逆転のフォール勝ち。2連覇を決めた試合直後こそ笑顔を振りまいたが、「あんまりよい試合ではなかった。内容も伴いたかった」とその後は苦笑いの連続だった。そのため、秋の全国中学生選抜選手権こそ、いい内容を伴った試合で締めくくることを誓った。

■正面タックルの猛攻で頂点を極めた吉村拓海

 男子47㎏級決勝はスピード感あふれる試合展開となった。昨年42㎏級3位だった吉村拓海が決勝で早山竜太郎(京都・男山三)を2-1で破って初優勝を決めた。

 第1ピリオドは1-1のラストポイント差で落とし、吉村は「ヤバイと思った」と振り返るが、3ピリオド通してペースは常に吉村が握っていた。得意の正面タックルを武器に何度となく相手の懐をめがけて突進。徐々に相手が下がり始めて第2、3ピリオドを奪って勝負を決めた。

 「チャンピオンになるために練習をしてきた。今後はタックルで3点を決められるようにしたい」と更なる進化を誓った。

■さえた! ローシングルで2年生チャンピオンへ

 女子37㎏級は中村美優が初優勝を決めた。決勝の相手は今年4月にJOCエリートアカデミーに入校した田南部夢叶(東京・稲付)で、第1シードで3年生の川村きこ(茨城・大子)を破って決勝に進出してきた1年生選手だ。中村は「1年生に負けてしまったらどうしよう」と不安があったそうだ。

 だが、中村の十八番であるローシングルのタックル(低く入る片足タックル)を中心に得点を重ねて2-0のストレートで勝利。「タックルに入れてうれしかった」と試合内容も大満足の優勝を決めた。「今大会、3年の山崎先輩が2連覇を決めた。私も来年しっかり勝って先輩に続きたい」と抱負を語った。

優勝を決め、野口監督に抱きついた吉村

優勝を決め、ガッツポーズの中村