※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
インド・ニューデリーで行われているアジア・ジュニア選手権に出場した男子グレコローマン・チームが7月20日、成田空港着の日本航空で帰国した。60kg級の矢部和希(日体大)と72kg級の日下尚(香川・高松北高)の2選手が銅メダルを獲得し、4年連続でメダルは確保したが、2013年以来の優勝選手輩出はならなかった。
藤波俊一監督(三重・いなべ総合学園高教)は「1日目、4階級で3位決定戦に進んだのにメダルがなかった。2日目に取れてホッとした」と安堵の表情。4年連続でメダルを獲得できたことと、高校生の日下がウズベキスタン選手に勝っての銅メダルを取るなどを評価した。
一方、組み合わせの関係で3位決定戦に進んだ選手もいて、グレコローマンの強化はまだ足らない現実も感じたという。スタンド戦では、そう押し負けることはないそうだが、グラウンドの防御の弱さゆえに負けるケースが多く、このあたりが課題だという。
2020年東京オリンピックの次を目指す世代が今回の選手。「この中から選手を育てて、2024年パリ・オリンピックにつなげなければならない。アジアでは金メダルを取れるくらいの実力がないと、パリ・オリンピックは厳しい」と話し、全体の底上げを期待した。
日本代表チームを指導する立場としては初の遠征となった長尾武沙士コーチ(大阪・興国高教)は「初日、4選手が3位決定戦に進みながら1個もメダルを取れなかったことが悔しかった」と、藤波監督と同じような第一声。初日の悔しさが発奮材料となって、翌日のメダル獲得につながったようだ。
「矢部は優勝の実力はあった」ときっぱり。日下はまだ高校生なので「来年、再来年が期待できる。アジアではなく、世界でメダルを取れる選手」と健闘をねぎらい、他の選手に対しては、「国内と海外の試合の違いを肌で感じたと思う。今後につなげてほしい」と言う。
国によって闘い方に特徴があることを実感するなど、指導者としても勉強になったという。「やはりイランが強かった。あと、カザフスタンとウズベキスタン。韓国は、今回に限ればたいしたことはなかったけど、本当はどうなのかな」など、コーチ目線での遠征を振り返った。
かつては、腹を下す選手や発熱したりする選手がいて、体調管理が課題とされたインドだが、ドクターなどの指導が行き届き、少なくともグレコローマンでは体調を崩した選手はいなかったという。藤波監督は、スタッフの尽力に感謝するとともに、「選手の意識も高くなっていますね」と話した。
■60kg級3位・矢部和希(日体大)「国際大会は初めてでしたが、優勝できるチャンスはありました。準決勝で負けたことが悔しい。スタンドで相手のペースになってしまったことと、グラウンドの切りの技術が足りなかった。3位決定戦へは、気持ちを切り替え、『メダルを持ち帰る』という強い思いで臨むことができました。高校時代の実績は何もないんです。日体大の軽量級はすごい選手ばかりで、銅メダルは、先輩の胸を借りて練習してきた成果だと思います。今回の悔しさと見つけた課題を元に、これからの大会につなげたい。(8月末の)インカレは優勝が目標です」
■72kg級3位・日下尚(香川・高松北高)「高校生ですし、思い切ってやることを考え、正直言ってメダルまでは考えていなかったけど、心のどこかでメダルを取りたいという気持ちもあった。銅メダルを取れてうれしい。3位決定戦は、前半の相手の力の強さにやりづらさを感じたけど、後半、相手はバテバテで、行ける、という気持ちで前に出て行ったら勝てた。準決勝の(U-23世界3位の)イラン選手は強かった。足腰の強さと前に出るプレッシャーがすごかった。自分もこの部分を強化したい。あと2年、ジュニアに出られるので頑張りたい。ただ、気負うと駄目なので、国内でもチャレンジャーの気持ちを忘れないでやりたい」