※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
男子グレコローマンの全日本チームが4月5日、日体大で新年度初めての合宿をスタート。海外遠征を含めた冬の強化期間を終え、世界選手権の日本代表争い(6月、明治杯全日本選抜選手権)へ向けてのスタートを切った。
2月末のアジア選手権(キルギス)と3月下旬のダン・コロフ-ニコラ・ペトロフ国際大会(ブルガリア)で、ともに金メダルを獲得。軽量級は世界のトップレベルを証明し、重量級でも87kg級の角雅人(自衛隊)がアジア選手権で銀メダル獲得など健闘した冬の強化だった。
赤石光生・強化本部長補佐は「遠征を通じて得たものを強化に役立ててほしい。やるべきことをしっかりやって頑張ってほしい」と、西口茂樹・強化副本部長は、アジア選手権で4階級で決勝進出を果たし2年連続で2個の金メダルを獲得したチームの頑張りをたたえ、「日本グレコローマンのレベルは間違いなく上がっている。東京オリンピックは全階級出場できるよう頑張ってほしい」と激励した。
松本慎吾・男子グレコローマン強化委員長(日体大教)は「どの選手もいい点と悪い点があり、それが見えてきた」と、表に出た結果に満足せず強化を進めていく姿勢。最も大きな課題はグラウンドのデフェンス。「徹底して取り組んでいきたい。まず明治杯、それからアジア大会と世界選手権を見据えて強化を進めたい」と、さらに上を目指す気持ちを話した。
ルールが微修正され、ブルガリアの大会から実施された。遠征に同行したコーチからの説明があったが、審判のレベルの問題や周知徹底されていない面があり、文面通りでないのはいつものこと。実際にあった事例を話し、新ルールに対応する闘いの必要性を伝えた。松本委員長は「やみくもにやるだけではなく、ルールに合わせた戦略を練っていかなければならない」と話した。
5月には重量級の遠征計画もあったとのことだが、受け入れ国がなく、全日本選抜選手権までは所属での練習と全日本合宿とで強化し、世界選手権の代表を目指す。
ダン・コロフ-ニコラ・ペトロフ国際大会で金メダルを獲得し、最高の気分で社会人となった60kg級の文田健一郎(ミキハウス)は「すごく新鮮な気持ち。社会人としてしっかりやらなければならない、という気持ちです」と、新たな決意。
合宿所を出て一人暮らしを始めたが、食事は大学内の今まで同じところで摂ることができるのでコンディショニング面での心配はない。「自由時間が増える分、今までやりたかったトレーニングや体のケアに時間を使い、強化につなげていきたい」と言う。一人での生活は楽な方へいってしまう危険性もあるが、「やらなければならないことも増えてくる。きっちりやりたい」との自覚を見せた。
ミキハウスはスポーツ選手の支援に力を入れており、他競技でも世界を目指す選手を多く抱えている。「みんなで一生懸命頑張ろう、という気持ちです。先輩にはすごい実績を持つ選手もいるので、負けないようにやりたい。(入社式では)社長に直に声をかけていただきました。会社の期待にこたえたい」と話した。
87kg級の角雅人(自衛隊)はアジア選手権で銀メダルを取り、ブルガリアの大会でも欧州の3選手を破って5位入賞。重量級の期待の一番手となった感もあるが、「(ブルガリアでの大会は)もうちょっとやりようがあった。悔いが残ります」と喜びはなし。
「相手が仕掛けた技で取られたのではなく、自分が仕掛けた技が元でポイントを取られ、そこから相手のペースに持ち込まれてしまった」とのこと。押していたので相手にパッシブがいってもいいような試合だったが、「技が出なかったし、精度が低い。デフェンスのレベルも低い」と反省の言葉が続いた。
重量級での2位と5位は立派と思われるが、「優勝していないので駄目です」と厳しい自己評価だが、がっちりと四つ組みされることがないなど、思った以上に自分のスタイルを貫けたことも感じている。「練習の方向性は間違っていないと思う。修正しながら、このまま伸ばしていきたい」と話した。
合宿は10日まで行われる。
※本合宿は競技力向上事業の助成を受けています。