※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
2018年女子ワールドカップは、きょう17日(土)から群馬・高崎アリーナで行なわれる。4大会連続優勝を目指す日本は午前中に練習し、午後は各自で体重調整を行なった。一方、日本と別ブロックで、2013年大会以来のチャンピオン奪還を目指す中国は夕方、約1間半の練習をこなした。
昨年9月から中国を指揮しているシメオン・ステレフ・コーチ(ブルガリア=1981年世界選手権・男子フリースタイル62kg級優勝)は「世界8強による闘い。絶対に勝ちたい。決勝進出を狙っているし、優勝も狙っている」と必勝を宣言した。各階級2選手をエントリーしており、一部の階級はけがで一番手が欠けているとのことだが、現状でのベストメンバーだという。
昨年12月にロシアで行なわれた大会では、優勝決定戦で日本にチームスコア4-4ながら勝ち点の差で敗れて2位に終わっている。それから約4ヶ月半。ステレフ・コーチは「キルギスの大会(アジア選手権)を見てくれ。8階級に選手を出して6階級優勝。みんな自信を持ってくれた」と満足そうに振り返る。
もちろん、日本がベストメンバーでなかったことは知っており、「ベストだったら違った結果になっただろう」と現状も認識。それがゆえに、日本がベストメンバーで参加するこの大会で選手の実力をしっかり把握したいという。
中国は第1日、モンゴル、ルーマニア、ベラルーシと予選リーグを闘う。
昨年9月から中国のコーチを務めるシメオン・ステレフ氏は、1981年世界選手権・男子フリースタイル62kg級で王者に輝き、栄和人・強化本部長のライバルでもあった選手。指導者としては、女子72kg級で世界V5を達成したスタンカ・ズラテバのほか、ラドスラフ・ベリコフ(2006年世界選手権・男子フリースタイル55kg級優勝)、ミハイル・ペトロフ・ガネフ(2010年世界選手権・男子フリースタイル84kg級優勝)らを育て、指導力には定評がある。
中国へ来た経緯や、中国のレスリングについて聞いた。(ブルガリア語通訳=筒井穣)
――2012年ロンドン・オリンピックのあと、アゼルバイジャンで指導していたと聞いている。中国で指導することになった経緯をお聞きしたい。
ステレフ アゼルバイジャンでも優秀な選手を育てたが、チーム全体を育てられる環境にはなかった。シニアで世界一を目指せる選手がいるのは2、3階級、5~6人くらいというのが現状だった。そのうち3人に世界のメダルを取らせたし、リオデジャネイロ・オリンピックでは女子3選手を出して2位、3位、5位の成績を残した。しかし、個人ではなくチーム全体を育てたい、という気持ちがあり、それができる中国に来た。決して金のためではない。
――やりがい、ということか。
ステレフ 私にとってレスリングは趣味ではない。仕事だ。やる以上は大きなことをやりたい。58歳になったが、毎日マットに上がり、選手とともに体を動かしている。
――中国のレスリングに最初に接した時の印象は?
ステレフ 元々強い選手が多かった。体力のある選手が多いと思った。しかし、テクニックでは教えることがたくさんあると感じた。
――昨年のロシアでの大会も今大会も、1階級2選手を連れてきています。国から出るお金も増えているのでしょうか。
ステレフ そのあたりはよく分かりません。私は選手を強くすることしか関心がなく、協会の予算には興味がありません。ただ、国がレスリングに力を入れていることは感じます。いい環境をつくってもらっていて、それには満足しています。
――あなたの教え子の一人のベリコフも中国のコーチになっていますね。
ステレフ 私が中国に来ることになった時、一緒にやりたいという希望を話し、認めてもらいました。私を助けてくれています。
――今年、世界一にたどりつける選手はいるでしょうか?
ステレフ 優勝できるかどうかは、神のみぞ知ることです。全階級の選手を期待しています。
――最後に、教え子のスタンカ・ズラテバはどうしていますか?
ステレフ 一時期、カデットのナショナルチームのコーチをやっていましたが、今は故郷にレスリング場をつくり、そこで指導をしています。