※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
男子グレコローマンの全日本チームが1月12日、日体大で合宿をスタートした。松本慎吾・男子グレコローマン強化委員長(日体大教)は、日体大の学生選手も含めた前で「足を引っ張る選手は、この場から去ってもらう」と厳しい口調で伝え、気合の入ったハイレベルの練習を要求した。17日まで行なわれる。
同委員長は先月の全日本選手権を「グラウンド、特にディフェンスが弱い選手は平均的に好成績につながっておらず、グラウンド攻撃の強い選手は勝ち上がっていた」と、新ルールが勝敗に及ぼした影響があったことを振り返った。一方、「強い選手は勝っている。結局、勝てなかった選手は弱かったということ」ときっぱり。
今後はスタンド、グラウンドとも同じ比率に強化していく方針。スタンドは、押し勝つだけでは必ずしも相手にパッシブ(消極性)が科されるわけではないので、確実にテークダウンできる技を習得させ、グラウンドはまず防御力をアップさせたいという。
この冬はロシア遠征の計画があったが、最終的に調整がつかなかった。昨年、3選手が遠征したキューバも、大会の日程がアジア選手権(2月27日~3月4日、キルギス)と近いため断念せざるをえなかった。「残念ですけど気持ちを切り替え、国内でしっかり鍛えてアジア選手権に臨みたい」と言う。一番手を派遣する予定。そのあと、3月にブルガリアとハンガリーへ遠征し、欧州のグレコローマンを体感する計画だ。
国内での闘いが世界トップの闘いでもある60kg級のような階級を、他にも作るのが目標。非オリンピック階級の選手に対しては、「いずれオリンピック階級に変えてくるだろうけど、今年はその階級でメダルを取れるだけの実力をつけ、世界選手権で結果を残してほしい」と期待した。
今年は8月にアジア大会(インドネシア)もある。グレコローマンは松本委員長が84kg級で優勝した2002年釜山大会から金メダルを取り続けている。「この伝統を守りたい。世界選手権では、もちろん金メダルを取るし、それ以外の階級でも優勝争いにからみ、去年以上の結果を残したい」と話した。
全日本選手権で世界王者を破り、久しぶりに一番手として全日本合宿に参加した59kg級の太田忍(ALSOK)は「参加する気持ちは、今までと同じですよ」と苦笑い。ただ、「今年の目標は世界チャンピオン。新たな気持ちで臨みました。チームの先頭を切って取り組みたい」と話し、リーダーとしての自覚は十分。
当面の目標はアジア選手権。「優勝を目指す」と話し、そのあとの欧州遠征にも参加し、新ルール下での闘いを国際舞台で試す予定。「実戦を通じてこそ実力が分かる。63kg級や67kg級の選手とも試合や練習をやりたい。そうすることで実力がアップしていくと思う」と話した。
55kg級の全日本王者に返り咲いた田野倉翔太(東京・自由ヶ丘学園高教)は、久しぶりの全日本合宿参加。「けがをしない、が目標では低すぎますかね」と第一声。全日本チャンピオンに復帰したものの、心身ともにまだ感覚が取り戻せていないのが現実で、この冬はしっかりと体力をつけたいという。
「元全日本チャンピオンだったというプライドは捨て、まず感覚を取り戻したい。そこからが強化です」。職場の理解を得られればアジア選手権には「挑戦したい。出られるとなったら、しっかり準備したい」というから、1ヶ月半のうちには体力、気力ともに戻したいところ。
「(2013年限りでシニアから消滅していた)55kg級って、どんな選手が出てくるんでしょうかね。若い選手ですかね。韓国や中国は(小柄な選手が多いので)けっこうすごい選手が出てきそう」と予想しながら、「とにかく感覚を取り戻すことに集中します」と話した。