2017.12.26

【2017年全日本選手権・特集】“全盛期”を迎え、これからが勝負…男子フリースタイル125kg級・荒木田進謙(青森県協会)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)

復帰して全日本王者に返り咲いた荒木田進謙(青森県協会)

 2017年全日本選手権の男子フリースタイル125kg級は、一昨年まで日本重量級のエースだった荒木田進謙(青森県協会)が3年ぶり6度目の優勝を飾った。29歳になった荒木田のテクニックはいまだ健在で、6月の全日本選抜選手権の決勝で敗れた田中哲矢(自衛隊)と今年の世界選手権代表の山本泰輝(拓大)を寄せつけず、試合後は肩で息をしながら「何とか優勝できてホッとしています」と会心の笑顔を見せた。

 長くフリースタイルの最重量級をけん引してきた荒木田は、2016年のリオデジャネイロ・オリンピック出場を逃して引退を決意。しかし、周囲から「もう一度やってみないか」と勧められ、徐々に現役復帰への思いを強めた。最終的には、今年に入って復帰を決意し、推薦で出場した6月の全日本選抜選手権は2位。練習再開から3ヶ月という期間では、「追い込みが足りなかった」というのも当然だろう。

 この時は練習期間もさることながら、コンビニで夜勤をしながら母校の光星学院高で練習するなど、トレーニングの質においても日本一を取り戻すには不十分だった。しかし、全日本選抜選手権で2位に入り、全日本の合宿に出られるようになったことで事態は好転した。トップ選手とスパーリングができるようになり、東京滞在中は早大で練習する環境も手に入れ、身体が徐々に昔の感覚を取り戻していった。

「6月の選抜では心に体がついてこなくて、自分のレスリングができなかった。そのあと全日本チームの合宿に参加させてもらうことができ、若い選手がみんなレベルアップしていて、大きな刺激を受けました」

 全日本選抜選手権の後は、さすがにコンビニの夜勤から離れたものの、現在も東京にいない時は、実家の世話になりながら個人練習に励むという厳しい環境が続く。世界で闘うためにも、今後はレスリングに集中するための所属企業が欲しいところで、荒木田の心に再燃したオリンピックへの思いに揺るぎはない。

「まだまだ成長できると思っています。軽量級は減量があるので年齢の影響があるかもしれないけど、重量級は30歳を超えてもまだまだやれます。自分も35歳くらいまではトップでいけると思っています」

 来年3月で30歳となる荒木田は東京オリンピックで32歳だから、35歳までやるとすればまだまだ“全盛期”だ。これからも後輩たちと切磋琢磨しながら、最重量級のレベルを世界に近づけていくつもりだ。