※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
東日本学生リーグ戦決勝の60kg級で、タックル返しをめぐる微妙な判定がありましたので、説明します。
第2ピリオド、1-1で迎えた終盤、赤の選手(谷田旭=日体大)のタックルを青の選手(鈴木康寛=拓大)が受け止め、相手の動きを完全に止めたあと、後方へタックル返しを試みました。両者がもつれ、最後は赤が上のゴービハインド(バックを取る体勢)となりました。
当初の判定は、青の自滅と判断されたようで赤の2点。ここで青側からチャレンジ(ビデオチェック要求)。ビデオチェックの結果、ジュリーの判定でポイントは両者2点。ポイントは3-3で試合が再開され、そのままのスコアで試合が終了しました。
3-3のスコアで、両者ともコーションはなく、ビッグポイントの数も同じ。次に勝敗の基準となるのが、ラストポイントとなっています。この場合は、両者2点であり、「ラストポイントを取った選手」が存在しません。さて、勝者は?
結論は、両者2点となった攻防は、青の仕掛けによるものであるため、青に勝利の権利があります。したがって、この場合は青の勝利となります。
青の仕掛けによって2点が入り、そのあと、赤が反撃をしたことによって2点が入った場合は、赤のラスト・ポイントとなり、赤の勝利となります。
この試合のケースでは、青が仕掛け、赤は何も技をかけていない状況でありながら、青が両肩をマットについたことで赤にも2点が入ったケースです。この場合は、「赤がラスト・ポイントを獲得した」とはなりません。
同様のことは、ローリングの場合でも起こりえます。1-1のあと、青がローリングを仕掛けたものの、自らの両肩もマットにつけてしまったために両者2点となったとします。この場合も、「仕掛けた青が2点、受けた赤がラスト・ポイントの2点」ではなく、「青の仕掛けによる両者2点」であり、青に勝者の権利があります。
この試合では、1分59秒から試合が再開されたため、その後の攻防に影響はありませんでしたが、残り時間が十分にある場合、このルールを知っているか、知らないかで勝敗を分けてしまうことになるでしょう。もつれて両者ともに2点が入った場合、「2点→2点」なのか、「両者2点」なのかを、しっかり確認することが必要となってきます。
また、もつれたあと、赤がゴービハインドの体勢を取ったのだから、「これで1点追加ではないか」という質問もあったとのことです。これは両者2点の攻防の流れのあとの体勢であるため、1点はつきません。
一本背負いで投げて3点を獲得し、フォールを狙いながらも成し遂げられず、最後にゴービハインドになっても、「3点+ゴービハインドの1点」とはならないのと同じ理論です。
(監修=東日本学生連盟・粟田敦審判長)