2012.05.19

【東日本学生リーグ戦・特集】自衛隊の力も借り、二部常勝を目指す“素人軍団”防衛大学校

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=保高幸子、撮影=矢吹建夫)

二部優勝の防大。表彰式の前に学生役員がブロンズトロフィーを落として壊してしまい、土台だけのトロフィーを受け取る!

 昨年のこの大会を一部リーグで闘った防衛大学校(防大)。今年は二部での試合となったが、順当に優勝を手にした。

 防大のメンバーはレスリング経験者が2人だけという素人集団。決勝の相手の立大は、埼玉栄や花咲徳栄といった強豪高校からの選手もおり、不戦勝の重量2階級を除く5階級の勝敗では2-3という結果。厳しい闘いとなったが、事実上の優勝決定戦となった84kg級の試合は白熱し、実力を十分に発揮しての勝利だった。

 自衛隊の幹部養成校という位置づけである防大の選手は、勉強に取られる時間が多く、毎日の練習に参加できるのがバラバラ。2、3選手しかいないという。他の大学のようにはいかず、長期休暇に集中して練習することになる。

 勝目力也監督(山梨学院大~自衛隊体育学校出身)は「長期休暇以外では、土曜日は1日2回練習ができます。あとは各自走ったりウエートトレーニングしたり、となります。ちゃんとレスリングができるようになるまでには3、4年計画です。みんなの意識が高いのでできます」説明する。

■普通に闘えるようになる頃には卒業

 しかし、闘えるようになると卒業し、また初心者を指導、という繰り返しだ。恵まれているのは自衛隊体育学校との合同合宿や出げいこができること。体育学校所属の全日本トップレベルの選手やコーチから学ぶことができる。

決勝84kg級、小松博也が勝って二部優勝を決めた

 同監督には、少ない練習時間のなかで選手のモチベーションを上げ続けるという大変な役割がある。「常日頃から二部リーグ優勝という目標を声に出し、その意識を持たせるよう努力しています」。

 自衛隊体育学校でなくとも、近くの高等工科学校との合同練習もある。自然と自衛隊としての一体感が生まれ、二部リーグ優勝という目標に向かうことができる。試合になれば多くのOBが応援に駆けつけることも、彼らのモチベーションになっているようだ。

 将来は国防を担う人材であり、体作りは仕事。レスリングは、陸上自衛隊で全隊員に課せられている徒手格闘の技術向上にも一役買っており、訓練の一環とも言える。少年工科学校で勝目監督の直属の部下(通常の学校でいう担任と生徒)だった木内尚之(4年生)がキャプテンシーをとり、監督をサポートしている。

 「このあと新人戦もありますが、素人集団なので大田区大会など市民大会にも出場できる。そうしながらレベルアップを図って、モチベーションを上げていきたい」。“二部常勝”を目指し、防大レスリング部はさらなる“訓練”に励む-。