※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治)
全日本学生選手権の男子フリースタイル65㎏級は米澤圭(早大)が2年連続2度目の優勝を遂げた。高校時代から幾度となく対戦している乙黒圭祐(山梨学院大)との決勝は接戦に。1-0で迎えた第2ピリオド、乙黒は場外逃避ポイントで逆転に成功するが、その後両者は点数を奪い合うデットヒートを繰り広げ、最後は米澤が6-5で逃げ切った。
この一戦をマットサイドで観戦していた高谷惣亮・拓大コーチが「面白かった」とひざを叩くほどの好勝負だったが、米澤は「自分のレスリングの歯車が狂ってしまった」とうなだれた。
「全然作戦通りではなかった。この大会の課題としていた自分から積極的に攻めるレスリングができなくて、逆にバタバタとしたレスリングになってしまいました」
米澤にとってのバタバタとしたレスリングとは、失点の多いそれを指す。「足も動いていなかったし、自分の形ではないレスリングになってしまった」
早大の太田拓弥監督は「最近は乙黒選手と対戦しても大差で勝つことが多かったんですけど」と前置きした上で激闘を振り返る。「山梨学院大は先日の世界選手権でOBの高橋(侑希)選手が世界チャンピオンになったり、藤波(勇飛)選手が3位になったりするなどチームとして勢いがある。乙黒選手も含め、全体的にレベルは上がっていると思いました。そういった状況の中、とりあえず勝てて良かった」
シニアでは鴨居正和(自衛隊)という大きな壁が立ちはだかる。2016年12月の全日本選手権では1-2の僅差で敗れた。今年6月の全日本選抜選手権では2-2のスコアながらコーションひとつの差で敗れた。太田監督は、この一戦はほぼ互角だったと残念がる。「組み手ではちょっと追い込んでリードしていた展開だったけど、ポイントをとりきれなかった。そこをこじ開けていく力強さがほしい」
打倒鴨居を果たすためには、米澤も得点力が必要不可欠だと感じている。「僕は小技ばかりなので、もっとパワフルなレスリングを身につけたい」
先の世界選手権(フランス)では、まだ自分が追い越せない鴨居が初戦敗退する試合映像を観てショックを受けた。「鴨居さんでもメダルを獲れなかった。自分なんてまだまだであることを痛感しました」
その一方で朗報も。ようやく発表になった新階級区分で、米澤が「最も自分に合った階級」と自負する65㎏級が残ることになった。「この階級があるなら、東京オリンピックに挑戦しようと思っていた。もし階級が変更されていたら、モチベーションも変わっていたでしょう。ただ、下の階級からも上の階級からも強い人が65㎏級に来ると思うので、もっと自分を磨きたい」
米澤にとっての自分磨き─、それは海外遠征に出かけることを指す。「現時点では海外に行っても僕は全然通用しないでしょう。でも、海外の選手と闘う経験をすることで、自分のレスリングスタイルはどんどん成長していくと思う」
最近はロシアのレスリングに興味を抱く。「ロシアの選手の試合を見たら、面白いと思う。もちろん勝つことが大前提になるけど、自分も面白いレスリングを突き詰めたい」
太田監督は「国内ではもう少し楽な展開で勝てないと、東京オリンピックでメダルを狙うのは厳しい」と釘を刺す。「米澤はレスリングの柔らかさと適応力は持っているけど、世界で通用するためには誰からでも取れるタックルとグラウンドの強化が必要になってくると思う」
11月21~26日にポーランドで開催される第1回U-23世界選手権の出場が内定しているという。世界を突破する糸口をつかめるか。