※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫)
全国高校生グレコローマン選手権の55kg級は、インターハイ2位の太田忍(山口・柳井学園=右写真)が勝ち、昨年に続いての連覇を達成した。金沢誠也(群馬・前橋西)との決勝は、3点となる胴タックルや首投げの大技がさえての快勝で、実力の違いを見せつけた。
インターハイでは、高橋侑希(三重・いなべ総合学園)の3連覇阻止に燃えていたが、2週間前に虫垂炎(盲腸)を患って手術。追い込みの練習ができないまま臨んだ。そんな状況であっても決勝まで進んだのは地力があればこそだが、やはり強豪相手には力尽きた。「まだ高校でフリースタイルのタイトルを取っていないので、絶対に、と思っていたんですけど…」。
その分、この大会の優勝を狙っていたが、今度はインターハイ後に青森商高でやっていた合宿で左足首のじん帯を負傷するアクシデント。コンディションづくりは完全に失敗した。しかし「言い訳にはできない」と臨んだ大会。「試合内容はよくなかったけど、勝ったことで、最低限のことはできたと思います」と及第点を与えた。
■グレコローマンの急造選手から、本格的なグレコローマン選手へ
インターハイV3の高橋侑希は、この大会にもエントリーしていた。「今度は絶対に勝つ」と臨んだが、棄権によって対戦は実現しなかった。「ちょっとがっくりきましたけど、(高橋が)いないからこそ、自分が優勝しなければならない、という気持ちでした」と、いなければいないで、また気合の入った大会だった。
昨年のこの大会は、グレコローマンはあまり練習していないこともあり、フリースタイル選手の“急造グレコローマン選手”というぎこちなさがあった。その後、千葉国体で優勝、今年4月のJOC杯では社会人や大学生相手に闘って3位に入賞するなど、グレコローマンもかなり板についてきた感じ。(左写真=決勝でがぶり返しを狙う太田)
「まだ世界で通用するレベルではないですよ」と謙そんしながら、「まあ、去年に比べれば上達しているでしょうね」と自画自賛。今回のV2によって、山口国体の優勝に向け大きな自信ができた。グレコローマンを続けるにせよ、地元山口での国体が終わったあとフリースタイルに戻るにせよ、この経験は大きく役立つことだろう。
今月末には高校選抜チームの韓国遠征に参加し、隣国の強豪選手と肌を合わせる。「実力アップのいい機会です」と話し、飛躍への気持ちは十分-。