※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
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(文=増渕由気子)
三重・一志ジュニア教室~三重・久居高を経て、今年4月に至学館大に入学-。吉田沙保里と同じ進路をたどった“沙保里2世の注目株”、それが奥野春菜だ。1年前、史上2人目となるインターハイ女子3連覇の偉業を達成。約1ヶ月後に行われた世界カデット選手権(ジョージア)でも優勝した。今年の目標は世界ジュニア選手権になるはずだった。
だが、シニアの世界選手権の55kg級代表となり、今に至る。「去年、世界カデット選手権に出場した時は、1年後にシニアの世界選手権に出られるなんて思っていませんでした」。本人もびっくりの飛び級での出場となった。
このミラクルをアシストしたのが栄和人監督だ。これまでも、逸材と見込んだ選手に階級変更を促し、伊調馨(ALSOK)や川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)らの才能を開花させた話は有名だ。栄監督が奥野に53kg級から55kg級への変更を促したのは、半年前のことだった。
選手は自分の階級にプライドと執着心を持つことが多く、奥野も55kg級への転向はあまり乗り気でなかった。「53kg級でやっていきたいと思っていました。けれども、弱いから階級変更を言われたのだと思い、反論する余地もなかった」と、53kg級への未練を残しつつ指示を受け入れた。
名将、栄監督の采配はズバリと当たった。今年6月の全日本選抜選手権では全日本選手権優勝の南條早映(JOCアカデミー/東京・安部学院高)や2014年世界女王の浜田千穂(キッコーマン)らを破って優勝。世界選手権代表に大きく前進した。監督の導きで“簡単に”世界への道が開けたかのように見えたが、奥野は「ここからが辛くて…。病んでいました」と衝撃の告白をする。
■“1ヶ月半の遅れ”を取り戻すべく、ペースを上げた
「明治杯(全日本選抜選手権)の翌日から原因不明の皮膚病になってしまい。大きい病院で診てもらって帯状疱疹だということが分かりました。練習できない日々が続き、代表を決める南條選手との参考スパーリングはぶっつけ本番でした」。
参考スパーリングを経て無事に代表に決まったが、キッズ時代の恩師、吉田栄勝さんの「1日休むと3日遅れる」という教えがよぎった。「完治するまで、結局16日も練習できなかったんです。16日×3って、1ヶ月半くらい休むことになりますよね」。練習を再開したのは7月上旬。復帰してからも動きが悪く「調子を完全に戻せるのか」と焦る日々だった。
大会を2週間前に控えた現在、調子は上がってきている。奥野の潜在能力を引き出しているのが、至学館特有の「当たり」という練習だ。代表レベルの選手が元に立ち、1分交代で5人とスパーリング。そこから3人連続で勝たないと終われない鬼メニューだ。久居高時代では考えられない練習に、「初めてやった時は死ぬかと思った」と音を上げるほどだったが、それをこなすにつれてシニアレベルの実力がつきはじめている。
55kg級の闘い方も「動きは53kg級より遅くても、単発の攻撃が通用しません。前さばきを作ってから攻めないと」と攻略方法も万全だ。
ゲン担ぎには興味がないと話す奥野だが、統計上55kg級は吉田が長らく優勝し、その後浜田千穂、向田真優と若手選手も初出場で初優勝を飾った。日本女子として外せない大事な階級でもある。「出るからには金メダルを獲りたい」。カデットからシニアへ一気にジャンプアップした奥野が、これまでの例にもれず55kg級で金メダルを目指す。
奥野春菜(おくの・はるな=至学館大) 初出場 1999年3月18日生まれ、18歳。三重県出身。三重・久居高卒。158cm。2013年中学二冠、2014~16年インターハイ3連覇。他に、2016年世界カデット選手権52kg級優勝など国内外で実績を残す。 2016年全日本選手権53kg級5位のあと、2017年クリッパン女子国際大会(スウェーデン)で優勝。シニアの国際大会を制し、全日本選抜選手権でも優勝した。 |
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