※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 1年3ヶ月のブランクを乗り越えて見事優勝した山口剛(ブシロード)
重量級の第一人者として2013年世界選手権では8位入賞の好成績、27歳だった昨シーズン、競技の集大成としてリオデジャネイロ・オリンピックを目指していた。だが、3月のアジア予選(カザフスタン)は3位とあと1歩届かず、続く世界予選第1戦(モンゴル)は9位。
最終予選(トルコ)は、直前に右足のハムストリングを部分断裂。現地に赴いて調整したが、最終的にベストを尽くせないとして出場を辞退。代わりに出場した山本康稀も勝ち抜けず、出場枠は獲得できなかった。
「これが(リオデジャネイロまでの道のりが)最後の試合だなと。引退? もちろん、そのつもりでした」。
復帰を後押ししたプロレスラーの永田裕志監督(後方)
■今年4月から再びプロ選手として練習を開始
レスリングから離れ、仕事に没頭しているうちに負傷した傷が癒えた秋ごろのことだった。「大学や高校の恩師と(ブシロードの)永田裕志監督から『もう1回、東京に向けて頑張ってみないか』と話がありました。その時はプロ選手としてやる、という考えがなく、仕事を続けながら、やれる範囲で、という考えでした」と、現役復帰を即答しなかった。
「キックスロードの仕事は自分から『何でもやらせてください』と言って、いただいた仕事でした。自分から辞めることはできなかったし、新規事業の仕事にやりがいも感じていました」と、社会人としてやっていくことを心に決めていたからだ。
アグレッシブに攻める山口剛(左)
4月から再びプロ選手として練習を開始。約1年間、本格的な練習から遠ざかったため、体は一回りほど小さくなったが、オリンピックの新しい階級区分が決まり次第、その体重に合わせた体作りをしていくつもりだ。
この1年のブランクは山口にとって回り道となってしまったのか―。答えは「ノー」だ。ブシロードに加えてキックスロードの社員からも応援される機会が増えた。「結果を出して両方の団体に報告ができるようになりたいです」。
2020年東京大会は山口にとって3度目のオリンピック挑戦となる。「山口剛、3度目の正直でオリンピックを目指し、今度こそ出場します。絶対に―」。