【ビシュケク(キルギス)】日本重量級初の世界王者誕生へ一直線! 昨年の世界選手権・男子フリースタイル97kg級で銅メダルを手にした吉田アラシ(三恵海運)が、2026年アジア選手権で2人の強豪を破り、快挙へ向けて、また一歩進んだ。
準決勝で2023年世界王者&2024年パリ・オリンピック王者のアフメド・タジュディノフ(バーレーン)を15-6で下し、決勝ではパリ3位&昨年の世界選手権2位のアミラリ・アザルピラ(イラン)を4-0で撃破。
タジュディノフとの試合は、前半こそポイントの取り合いとなった。しかし、吉田の前へ出る圧力に押されたか、後半、タジュディノフは完全に失速して吉田が攻勢一方へ。アザルピラとの一戦も常に前に出て防戦一方へ追い込み、4-0のスコアで快勝。負けるムードが感じられない会心の勝利の連続だった。
昨年の世界選手権で同じ3位だったタジュディノフとは初顔合わせ。「何をしてくるか分からない怖さがあった」と、初顔合わせの強豪と闘うときの不安があったことを口にしたが、「着実に足を出して攻めた」と、攻撃精神を貫くことができた。
アザルピラとは、97kg級に上げて日が浅かった2024年4月のパリ・オリンピック・アジア予選で対戦し、 1-9で負けていた。2年ぶりのリベンジマッチ。大量ポイントはなく、本人は「試合内容は面白くなかったと思う」と謙そんしていたが、常に攻めた姿勢は、見ている者に強さを感じさせたに違いない。
印象的だった出来事は、相手が、ともにインジュリータイム(負傷治療の時間)を取ったこと。タジュディノフは右肩、アザルピラは右ひざを痛めたようで、レフェリーが認めてドクターの診断を要求したのだから、正当な行為ではあろう。
だが、一般的にスタミナ回復のためのフェイク(仮病)のケースがあるのも事実。両選手がそうだとは断定するつもりはないが、勝利に向かって闘志を燃やしている選手なら、多少の痛みがあっても相手に弱みを見せることはしない。吉田の圧力にスタミナを切らし、負傷を理由にスタミナ回復をはかったと考えてもおかしくないほど、吉田の攻めるパワーは強かった。フェイクでないのなら、それは吉田の攻撃力のすごさと言える。
昨年の世界選手権での反省を生かした優勝でもあった。世界選手権では、準々決勝でパリ・オリンピック2位のギビ・マチャラシビリ(ジョージア)を破りながら、続く準決勝で約半年前に勝っているカイル・スナイダー(米国)に敗れた。オリンピック2位の選手を破ったことで、「少し満足してしまって」と、無意識のうちに達成感があったようだ。
その反省が、今大会ではオリンピック王者を破ったあと、「気持ちを切らさないようにする」というコメントに表れていた。トーナメントは、特定の選手を倒して終わり、ではない。優勝するまでが勝負。昨秋の経験を生かした優勝だった。
世界選手権での反省は、もうひとつある。半年前に勝ったスナイダーは、当然のことだが再戦にあたって研究してきた。吉田も研究しただろうが、スナイダーの研究の方が上回っていた。一回勝ったからといって、次も勝てる保証がないのが勝負の世界。スナイダーにリベンジされたことは、今後、タジュディノフやアザルピラと再戦するときに生かされるはず。
早ければ9月のアジア大会(名古屋市)で実現するであろう再戦で、今度はどんな勝ち方を見せてくれるか楽しみだ。
今年と来年の世界選手権、さらに2028年ロサンゼルス・オリンピックで予想される宿敵の中で、まだ闘ったことがないのが、2021年東京オリンピック王者のアブデュラシド・サデュラエフ(UWW=ロシア)。昨年の世界選手権はクロアチアからビザが発行されずに不参加となり、吉田との接点はない。
強豪を破ってのアジアV2を達成した吉田の存在は、サデュラエフの視野にしっかりと入ったことだろう。今年の世界選手権で激突の可能性があるが、その前に、最近流行っているワンマッチ大会で闘ってみるのも選択肢のひとつ。強豪との対戦は、勝っても負けても、さらなる飛躍につながる収穫や課題が見つかるはずで、吉田もオファーがあれば前向きに考える意向を示した。
今月20~26日の欧州選手権(アルバニア)に出場予定のサデュラエフが、衰えぬ強さを発揮するか。2月のランキング大会第2戦(アルバニア)では4試合に快勝して優勝しているので、陰りはないだろう。パリ2位で吉田が勝っているマチャラシビリ(前述)も4連覇を目指してエントリーしている。
他に、どんな強豪が台頭するか。どんな選手が出てきても、今の吉田には動じない強さが感じられる。反省と課題をひとつずつつぶし、世界の頂天へ突き進む。