(文・撮影=布施鋼治)
中学生まではさっぱり勝てなかった選手が、いきなり初優勝を遂げた-。
2月1日、神奈川・横須賀アリーナで行われた2026年関東高校選抜大会・最終日(個人対抗戦)。そんな芸当をやってのけたのは、男子51kg級を制した齋藤由泰(ただやす=東京・文化学園大杉並)。
「すごくうれしい気持ちと、周りのみんなに感謝したい気持ちでいっぱいです」
成長の兆しは、前日に行われた学校対抗戦でも如実に現れていた。今年1月11日開催の齋藤つよし杯(神奈川・磯子工高)で辛酸をなめさせられた岡伊咲(埼玉・花咲徳栄)へのリベンジに成功。その勢いを持ち込んだ。
中学までの最高成績は、「3年生のときに出場した全国中学選抜U15選手権でのベスト16」と言う。小学1年生から東京・MTX GOLDKIDSでレスリングを始めたが、チームには齋藤よりいい成績をおさめる選手がたくさんいたので、子供心に肩身の狭い思いをしたことは一度や二度ではない。
「本当に全然勝てませんでした(照れ笑い)。それでも続けることができたのは、成國晶子代表と成國大志コーチの支えがあったからこそです。そのおかげで、続けてこられたんだと思います」
結果は出なくても、成國コーチからは「スピードはある」と評価されていたので、スピードを意識しての練習を積み重ねた。その成果は高校生になってから肌で感じたようで、個人戦の組み合わせが決まると、「準決勝まではいける」と確信したと言う。
「でも、準決勝からは厳しい闘いになると思ったので、3位以内に入るという目標を立てました」
やみくもに「優勝する」と目標を定めはしなかった。否定的にならずに、いろいろ考えたうえで、「3位以内」が設定した目標だった。苦節10年。下積みが長かっただけに、まず手が届く目標を立てた。予想を飛び越えての優勝に、気持ちの整理がついていない様子だ。
急成長できた要因は、練習量の増加か? だが、「練習量は変わらないと思います」と言う。
変わったのは、レスリングと向き合う意識的な面とのこと。「中学生までは個人的に試合を展開するというイメージだったけど、高校生になってからは部活というくくりになる。(チームメートの)みんなと一緒に高め合っていくという意識が新たに加わり、ここまで来られたんだと思います」
初めて優勝したからといって、天狗になることなく、「親も応援してくれたし、自分の減量や練習を手伝ってくれた方々にお礼を言いたい」と、繰り返し周囲への感謝を口にした。
現在の課題点は技のレパートリーがまだ少ないこと。「技術パターンが少ないので増やしていきたい」
次戦は3月下旬に新潟市で行われる風間杯全国高校選抜大会。その抱負を聞くと、これも決して背伸びをしない目標を掲げた。
「優勝できれば優勝したいけど、最低でも3位には入りたい」
控えめな野心家は、成長の途上にいる。