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日大レスリング部OGで、現在は女子プロレス団体「センダイ・ガールズ」(仙女)のエースとして活躍している橋本千紘が1月27日、10団体から約20人の若手プロレスラーを連れて母校・安部学院高校レスリング部の練習に参加。プロアマの垣根を超えての底上げを目指した。
プロアマ合同練習は昨年6月から定期的に実施しており、今回が7回目。橋本の「若いプロレスラーは、もっとレスリング技術を身につけなければいけない」という方針に多くの選手が呼応し、選手が増えていったという。
「最初は、そんなに集まらないと思ったんですよ」とのことだが、第1回から意外に多くの選手が集まり、びっくりしたという。どの団体にも、プロレスを教える指導者や先輩はいても、レスリングを教えられる人はそういない。それだけに、「レスリングを学びたい」という選手は多いようで、参加選手の多さに「感動しました」と振り返る。
第1回のときは、2021年東京オリンピック金メダリストで同高OGの須﨑優衣(キッツ)や志土地真優(ジェイテクト)も参加。今回は2023年全日本チャンピオンの茂呂綾乃や、昨年の全日本選手権3位の佐々木すず(中大)が参加しており、橋本を含めてプロ選手が積極的に挑むシーンが見られた。
2012年世界大学選手権3位などの実績を持つ橋本は、日大を卒業してプロレスへ進み、2016年にデビュー。約10年のキャリアを持ち、現在は仙女のワールド・チャンピオン。昨年11月の10周年記念興行では後楽園ホールに超満員の観客を集めるまでの存在になった。
そのキャリアの中で感じたのはレスリングの必要性。今のプロレスは空中戦もあり、レスリングとは離れた闘いになっている面もあるが、ベースとなるレスリングの体力と技術なくしては、闘いの幅が広がらない。
あらゆる格闘技の練習をしている総合格闘技の選手が、一番きつくて嫌がるのがレスリングの練習と言われる。かたときも休めない組み合いの中、心拍数の上がり方と筋持久力の必要性が半端ではない。プロレスでは、試合でも練習でも、絶えず動きを続けることはないので、レスリング選手との練習では、その点がかなりきつそう。
橋本はもうひとつ、ポーカーフェイスで闘うことの大変さを指摘する。レスリングは、きつくても、それを相手に気づかれないように装わなければならない。プロレスは、技を受けたときの表情も必要。表情に変化のない選手はファン受けしない。「つらくても、それを表に出せないことが(プロレスラーにとって)大変そうです」。
だが、辛さを乗り超えられる体力があってこそ、ファンを魅了するプロレスができる。プロレスの重要な要素である相手の技を真っ正面から受けることもそうだが、基本は体力であり肉体の強さ。橋本は、若いときにしっかりした体力をつける重要性を訴える。
同時に、この練習は自身にとっても重要な場であると説明する。プロで10年のキャリアを超え、エースの立場となった現在、練習では若手を指導することが多く、アマチュア時代のような追い込んだ練習は、そうできない。体力を維持し、闘争心を燃やすためにもレスリング練習は欠かせそうだ。
今の女子レスリングの繁栄は、女子プロレスとの交流を抜きにしては語れない。のちの福田富昭・日本協会会長が1985年に日本で女子レスリングをスタートさせたとき、人気絶頂だった全日本女子プロレスに協力を依頼。プロアマ規定があったのでプロレスラーの試合出場はなかったが、練習生が練習と試合に参加してくれ、選手が集まらなかった困難な時期を支えてくれた。
プロアマがオープンになったあとの1993年には、人気プロレスラーのジャガー横田が全日本女子選手権に出場。1994年に東京ドームで行われた全日本女子プロレス「憧夢超女大戦」では、山本美憂と浜口京子がリング上でレスリング・マッチを披露。女子レスリングの存在をアピールした。
全日本女子プロレスがなくなったためか、女子レスリングが一本立ちしたからかは分からないが、その後は接点が少なくなった。安部学院高から永島千佳世、中京女大(現至学館大)からバンザイ千恵(本名:石井千恵)がプロレスへ進んものの(関連記事)、レスリング界をあげてのプロアマ交流は途絶えてしまった。
橋本の呼びかけで、再びプロアマの本格交流が始まりそう。それによって、「プロレスラーを目指すためにレスリングをやる」という選手も出てくるわけで、それはレスリングの競技人口の増加につながる。
橋本が何度も口にしたのが「プロアマの垣根を超えて」という言葉。目指す方向は別であってもベースは同じ。切磋琢磨によって双方のメリットが期待される。
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