(文・撮影=布施鋼治 ) ※写真集 → クリック
「元気に声を出していこう!」
力強い手拍子とともに、井上謙二・強化本部長のゲキが室内に響き渡る。全日本チャンピオンを中心とした全日本チームは1月17日、東京・味の素トレーニングセンターで3スタイル合同合宿を公開した。井上強化本部長は、スタート時から音頭をとって練習を引っ張っていた。「当初は男子グレコローマンの松本隆太郎・強化委員長(育英大監督)が音頭をとる予定だったのですが、体調不良ということで、自分がやらせていただくことになりました」
男子フリースタイルは9日から、男子グレコローマンと女子は14日からスタートし、いずれもこの日が最終日。2024年パリ・オリンピックのメダリスト組では、樋口黎(ミキハウス)、清岡幸大郎(カクシングループ)、文田健一郎(ミキハウス)、鏡優翔(サントリー)、尾﨑野乃香(慶大)が参加。けがのため、清岡と鏡は自主トレ中心のメニューとなってしまったが、各スタイルともチームワークのよさを象徴するかのように笑顔の絶えない練習が印象的だった。
そうした中、井上強化本部長は2つの検証を実施したという。ひとつは、今月規約が更新されたというアンチドーピングについて。「新しい情報を医科学委員会の田中哲平先生に話していただきました。アンチドーピングをしっかりやることで、レスリングの価値を守りながら選手たちの意識を高めることも大事だと思っております」
もうひとつは、今年からのルール改正について。「小池審判長(邦徳=UWW審判委員会イストラクター)から3スタイルそれぞれの新しいルールについて説明していただきました。その際、コーチだけではなく、選手からも積極的に質問が飛びました」
井上強化本部長は、まず男子フリースタイルと女子で新たに適用となる場外ステップアウトの定義に注目した。「今までは、膝が浮いた状態で場外に出ると1ポイントだった。今後は、膝をついていても体全部が出るとポイントになる。場外際の攻防が少し変わるかな、と思います。今までは膝がついていればノーポイントでしたからね」
もうひとつは、今までは反則とされていた足踏みの解禁だ。「海外の選手は足踏みの技術に長けている選手が多い。足踏みをフェイントとしての展開が増える気がします。足踏みをさせないことも重要だけど、そこはひとつ注意すべきところかなと思いますね」
日本では樋口が使い手として知られている。取材日、日帰りで合宿に参加した樋口に井上強化本部長は「あけましておめでとう」と言いながら樋口の足を踏もうとした。「そうしたら、彼はやっぱり足の引きが速いですね。踏ませてくれなかった(微笑)。踏むのもうまいけど、踏ませないのもうまいと感心しました」
同本部長は、1994年広島大会以来となるアジア大会の自国開催(名古屋)についても言及した。「日本でやるということで、国民の皆さんに注目していただける大会になると思っています。その前に行われる予定だった世界選手権がアジア大会後に変更になったということで、強化チームとしては運営しやすくなった」と話した
アジア大会でのメダル獲得数についての質問が飛ぶと、井上強化本部長は「前回(2023年杭州大会)の金5、メダル12個を超えたい」と語気を強めた。「北朝鮮が台頭するなど状況も変わってきているが、(計12個を)ひとつの目標としてとらえたい」
10月にバーレーンで行われる世界選手権の約2ヶ月後に開催される天皇杯全日本選手権は、オリンピック・ロードの幕開けとなる。井上強化本部長は「いまのところ誰にでもチャンスはある」と語る。「試合日にピークに持っていけるように、日々の練習から意識を高く持ってロサンゼルスを目指してもらいたい。そのためにも、1日1日を真剣に取り組んでほしい。そういう選手が最後に結果を出すと思う」
新年早々、ハイテンションだった井上強化本部長の気合いは、合宿に参加した選手たちに乗り移ったか。