2026.01.04

2026年世界レスリング界の注目(2)…レスリング大国・ロシアの再浮上なるか

 国際オリンピック委員会(IOC)の決定で一時期は完全に孤立したロシアのスポーツ界は、レスリングに限れば、2025年は、数多くの国際大会出場を果たし、結果を残した。

 ロシア・レスリング協会のウェブサイトによると、UWW選手として出場したU15・17・20・23・シニアの世界選手権と欧州選手権では、金メダル61個を含めて合計164個のメダルを獲得。着々と国際舞台での実力回復を果たしている。2026年は各世代で再びロシア旋風が起きる可能性が十分だ。

▲パリ王者・清岡幸大郎(カクシングループ)と激闘を展開したイブラヒム・イブラヒモフ=UWWサイトより

 2022年2月のロシアのウクライナ侵攻によって、IOCはロシアとロシアを支持したベラルーシの選手・役員を国際大会に参加させないよう、すべての国際競技団体に通達。世界レスリング連盟(UWW)はこれを受け、同年はあらゆる国際大会に両国の参加を認めなかった。

 2023年になると、翌年のパリ・オリンピックへ向けてIOCの姿勢が軟化し、戦争を支持しないなどの「中立」を条件に出場を認める決定。ロシアは6月のU17欧州選手権に「AIN」として参加。世界選手権(セルビア)にも2年ぶりに出場を果たした。

 しかし、さすがのロシアといえども、1年半を超える国際大会のブランクの影響は大きく、男子フリースタイルで2階級を制したものの、2021年東京オリンピック王者の2選手(ザウール・ウグエフ=57kg級、アブデュラシド・サデュラエフ=97kg級)がメダルを逃し、男子グレコローマンは銅メダル1個、女子はメダルなし。戦力低下は明白だった。

2024年、再び世界の表舞台から遠ざかった

 2024年パリ・オリンピックは、IOCの厳格な規定で多くの選手の出場が不可能へ。出場が認められた選手も、IOCの決定に反発するロシア協会に同調して出場せず、再び国際舞台から遠ざかった。

 しかし、2025年にはIOCがからまない欧州選手権や世界選手権へ積極的に出場(AIN選手ではなくUWW選手としての参加へ)。旧ソ連圏で行われるワンマッチ大会「PWL」に外国の強豪選手も参加するなど国際交流が盛んになり、実力回復の兆しを見せている。

▲世界選手権の準決勝で米国期待の新星を破り、その勢いで世界一に輝いたザウール・ウグエフ=UWWサイトより

 2026年は、世界選手権こそ3スタイル合わせて1階級のみの優勝だったが(ザウール・ウグエフ=男子フリースタイル61kg級)、欧州選手権は男子フリースタイル5階級優勝(メダル8)、男子グレコローマン2階級優勝(メダル3)、女子3階級優勝(メダル6)と、往年の結果に肉薄。

 段階を経て世界選手権での開花も予想される結果となった。2026年は、眠っていたレスリング大国のパワーが爆発するときか。

 世界王座奪取の可能性を持つ選手は下記の通りだが、若手も育っているので、世界選手権に出場できる保証はない。4月の欧州選手権(アルバニア)から、動向に目が離せない。


【男子フリースタイル57kg級】ナチン・モングシュ(25歳)
2021年欧州選手権2位、2023年U23年世界選手権優勝を経て、昨年の欧州選手権優勝。

▲シベリア南部のトゥヴァ共和国生まれのナチン・モングシュ。アジア系民族の強さで世界一を目指す=UWWサイトより


【男子フリースタイル61kg級】ザウール・ウグエフ(30歳)
2021年東京・オリンピック57kg級優勝。2024年秋から61kg級で闘い、昨年は欧州と世界をW優勝。

▲61kg級で初めて世界一に輝いたザウール・ウグエフ。LA2028は65kg級か? 57kg級か?


【男子フリースタイル65kg級】イブラヒム・イブラヒモフ(24歳)
2023・24年にU23世界選手権を連覇。昨年は欧州選手権を制し、世界選手権は清岡幸大郎に敗れるなどして5位。

▲日本がオリンピック2大会連続で制した階級に台頭するか、イブラヒム・イブラヒモフ=UWWサイトより


【男子フリースタイル74kg級】ザウルベク・シダコフ(29歳)
2021年東京・オリンピック優勝。ブランク明けの2023年世界選手権でも勝った。昨年の欧州選手権決勝と世界選手権準決勝でチェルメン・バリエフ(アゼルバイジャン)に敗れたが、世界トップの実力はキープ。

▲世界一返り咲きとLA2028を目指すザウルベク・シダコフ=2023年世界選手権


【男子フリースタイル79kg級】アフメド・ウスマノフ(29歳)
2023年世界選手権優勝。2024・25年欧州選手権を連覇。昨年の世界選手権は9位。

▲2023年に世界一に輝いたアフメド・ウズマノフ。世界一返り咲きを目指す=UWWサイトより


【男子フリースタイル97kg級】アブデュラシド・サデチュラエフ(29歳)
2016年リオデジャネイロ・オリンピック86kg級優勝、2021年東京オリンピック97kg級優勝を含め、世界一に8度君臨(関連記事)。

▲リオデジャネイロと東京で手にした金メダル。パリで手にできなかった3個目を目指すアブデュラシド・サデュラエフ


【男子グレコローマン55kg級】エミン・セフェルシャエフ(27歳)
2021年に欧州選手権優勝と世界選手権2位。昨年は欧州選手権とUWWランキン大会第4戦(ハンガリー)で優勝。世界選手権は第2シードが予定されていたが、入国してホテルにチェックインしたあとビザの無効を言い渡され、警察の護送のもと強制送還された(ロシアは強く抗議した)。

▲政治力で世界一奪取を阻止された(?)エミン・セフェルシャエフ=UWWサイトより


【男子グレコローマン130kg級】セルゲイ・セメノフ(30歳)
2016年リオデジャネイロ・オリンピックと2021年東京オリンピックで、ともに3位。昨年は欧州選手権を制した。世界選手権は10位。

▲欧州選手権を制したセルゲイ・セメノフを、オリンピックV5のミハイン・ロペス氏(左=キューバ)が祝福)


【女子55kg級】エカテリナ・ベルビナ(25歳)
カデット(現U17)、ジュニア(現U20)、U23、シニアの欧州選手権制覇の実績。昨年は欧州選手権を制し、世界選手権は北朝鮮選手に敗れて2位。

▲世界一に一歩及ばなかったエカテリナ・ベルビナ。2026年世界選手権でのリベンジを目指す=UWWサイトより


【女子57kg級】オルガ・ホルシャブチェワ(31歳)
53kg級で2度の欧州選手権優勝の実績を持ち、2021年東京オリンピック出場(10位)。2024年パリ・オリンピックは57kg級で出場資格を得たが出場ならず。昨年の欧州選手権優勝、世界選手権3位。

▲欧州チャンピオン&世界3位のオルガ・ホルシャブチェワ=UWWサイトより