2026.01.03

2026年世界レスリング界の注目(1)…アブデュラシド・サデュラエフ(ロシア)の復帰で、97kg級が熱く燃える!

 2026年は、現在の世界レスリング界のスーパースターの一人ながら、政治的事情によって雌伏を余儀なくされているアブデュラシド・サデュラエフ(現在29歳=ロシア)が再飛躍する年になるだろう。男子フリースタイル97kg級は、新旧入り乱れた熱い闘いとなり、世界のレスリング・ファンを魅了するはずだ。

▲2026年、再飛躍が予想されるアブデュラシド・サデュラエフ(ロシア)。世界のレスリング界を活性化させるか=UWWサイトより

 2022年2月のウクライナ侵攻によって、ロシアは国として国際舞台での出場を認められていない。その後、ベラルーシとともに戦争に関与・賛同していない選手が「AIN(中立選手)」として参加できるようになったが、2024年パリ・オリンピックのレスリングでは、国際オリンピック委員会(IOC)はオリンピック3連覇を目指した男子フリースタイル97kg級のアブデュラシド・サデュラエフ(現在29歳)には、資格を与えなかった(ロシアは、認められた選手も全員が不出場)。

 サデュラエフは、パリ・オリンピックの約3ヶ月後にアルバニアで行われた非オリンピック階級世界選手権では、AIN選手として参加が認められ、92kg級に落として8度目の世界一へ(世界選手権6度・オリンピック2度)。再び世界の舞台で躍動すると思われた。

 しかし、2025年は欧州選手権(スロバキア・ブラティスラバ)でのビザ発給不認可に続き、世界選手権でもクロアチア政府からのビザ発給が認められず、不参加となった。

▲米ロ決戦を制し、幕張メッセでオリンピック2連覇(2階級制覇)を達成したアブデュラシド・サデュラエフ。V3の機会は奪われた

サデュラエフのため世界選手権の開催地をバーレーンに決めた !?

 同選手は2024年2月にルーマニアで行われた欧州選手権でもビザが発給されなかった。ロシアのウクライナ侵攻以外の理由があるのかもしれないが、詳細は不明。ただ、シェンゲン協定圏(ビザなしで自由に移動できる国)には入国できない」との情報もある。ルーマニア、スロバキア、クロアチアともシェンゲン協定圏の国。サデュラエフの欧州での活動に制限がかかっているのが実情のようだ。

▲2024年欧州選手権出場のためルーマニア・ブカレストへ到着したサデュラエフ。入国を拒否され、帰国した

 2026年の欧州選手権はアルバニア、世界選手権はバーレーン。世界選手権は当初スロバキアで予定されていたが、バーレーンも立候補し、“後発”のバーレーンに決まった。UWWは明言していないが、世界レスリング界のスーパースターが入国できない可能性のあるスロバキアでの開催を“却下”したことは、容易に予想できる。

 2027年の大会日程では、欧州選手権は北マケドニア、世界選手権は米国(ラスベガス)。ともにシェンゲン協定圏以外の国であり、サデュラエフの入国に支障はない。2028年ロサンゼルス・オリンピックへ向けて、活躍の舞台が与えられる可能性は高い。

男子フリースタイル97kg級の台風の目は吉田アラシ

 サデュラエフがいなかった期間の男子フリースタイル97kg級は、大きく動いた。台風の目となっているのが、吉田アラシ(21歳=日大)。昨年2月のUWWランキング大会(アルバニア)では、オリンピック優勝の実績を持つカイル・スナイダー(30歳=米国)を撃破する殊勲。

 スナイダーには9月の世界選手権でリベンジされ、同選手が世界一に返り咲いたが、世界王者に輝く実力をキープしている選手を破った事実は大きい。世界選手権では、パリ・オリンピック2位のギビ・マチャラシビリ(28歳=ジョージア)を破っており、その実力は世界トップクラス。U23世界選手権も制して勢いを持ち、シニアの世界一を視界に入れている。

▲97kg級のニューリーダーの筆頭、吉田アラシ(日大)=UWWサイトより

 パリ・オリンピックを制したアフメド・タジュディノフ(22歳=バーレーン)も、地元の世界選手権へ向けて燃えるだろう。オリンピックのあと肩の手術に踏み切ってブランクが心配されたが、昨年7月の「スペイン・グランプリ」とUWWランキング大会(ハンガリー)に優勝して健在をアピール。

 ただ、一時の勢いがなくなっているのも事実。世界選手権では、パリ・オリンピック3位のアミーラリ・アザルピラ(23歳=イラン)にリベンジされて3位。11月のイスラム競技大会では、吉田アラシがアジア選手権とU23世界選手権でともに快勝しているアイトムハン・リザベク(21歳=カザフスタン、2023年世界選手権92kg級優勝)に敗れた。負傷の影響か、オリンピックを制して気持ちに緩みが出たのか…。地力は十分であり、再浮上の可能性は十分。

リオ王者のそろい踏みを、若手が打破しなければならない

 タジュディノフを破ったアザルピラ(前述)は、イスラム競技大会を制して勢いがある。イランの同級には、74・86kg級で世界一に輝いたことのあるハッサン・ヤズダニチャラティ(31歳)が肩の手術を経て復帰。12月に行われた国内の大会に参加し、2023年U20世界チャンピオンのアボルファズル・ババルー(イラン)に10-0で快勝した。

▲吉田アラシとともに新世代の旗頭となるか、アミーラリ・アザルピラ(イラン)=UWWサイトより

 このまま97kg級で闘うのか、そうであったとしてもイランの代表争いを勝ち抜けるかどうかは分からない。もしそうなった場合、ヤズダニチャラティ、サデュラエフ、スナイダーの2016年リオデジャネイロ・オリンピックの王者(順に74kg級、86kg級、97kg級)が覇権を争うこともあり、それはそれで世界の注目を集める闘いとなる。

 だが、10年前の王者が優勝争いをするような状況であってはなるまい。吉田アラシ、アフメド・タジュディノフ、アミーラリ・アザルピラ、アイトムハン・リザベクら20歳を超えたばかりの若手の台頭が期待されるところ。ベテランと若手の激しい争いが予想される同級のLA2028ロードだ。