史上5人目のインターハイ3連覇(2021~23年)を達成して大学レスリング界に身を投じた山口叶太(中大)が、新人戦のグレコローマン82kg級とフリースタイル86kg級で勝ち、フリースタイルは3季連続、グレコローマンは2季連続での優勝。全6試合(グレコローマン2試合、フリースタイル4試合)をテクニカルスペリオリティでの快勝に加え、フリースタイルは失点「0」で、飛躍のベースを確立した。
山口は「とりあえず安心しました」と第一声。高校(東京・自由ヶ丘学園高)3年生のときに全国高校生グレコローマン選手権に出場して3位に入っているが、入学1年目の昨年はフリースタイルに専念していた。
今年は余裕ができたのか、「グレコローマンの技術でフリースタイルに生かせるものがある。出られる試合は、出た方がいいかなと思って」と方向転換。10月の全日本大学グレコローマン選手権にも選ばれて出場するなど(5位)、グレコローマンにも積極的に出場している。同選手権ではグレコローマンを中心にやっている上級生に負けて5位に終わったものの、闘いの幅を広げる姿勢が感じられる。
フリースタイルの選手がグレコローマンに取り組んで実力アップを目指すことは、よくある。最近では、フリースタイル70kg級で2022年世界王者に輝いた成國大志(筒井メディカルグループ)が、グレコローマンで世界選手権代表になり、9月の国民スポーツ大会はフリースタイル74kg級にUターン。70kg級世界王者の青柳善の輔(クリナップ)に勝って変わらぬ実力を見せ、最後は優勝。グレコローマンの技術はフリースタイルでも役立つことを証明した。ますます“流行”しそうなムードになっている。
山口もその流れに乗って上昇したいところ。成國から学び、もうひとつ見習っているのがパワーアップ。成國が技術練習よりパワートレーニングに力を入れて世界王者に輝き、グレコローマンでも日本代表となる実力を身につけたことは選手の間で伝わっている。山口も「成國さんはパワーがすごい。パワーがあればレスリングの強さにつながることを感じました」と話し、ときに一緒に練習させてもらって筋力アップを目指している。
今大会は82kg級と86kg級の試合だったが(注=新人戦は一度優勝した階級に出場することはできないため)、パワー負けはなかったことを感じ、筋力トレーニングの成果は確実に出ている。
もちろん、70kg級から74kg級に上げて1年も経っていないので、パワーアップは途上段階。6月の全日本選抜選手権では、3ヶ月後に世界王者に輝くこととなる髙橋海大(日体大)とのパワーの差を感じて2-9で黒星。「74kg級でやっていく以上、さらにパワーをつける必要を感じました」とのこと。あれから半年が経つ全日本選手権では、どこまで迫れるか。
同級には世界王者・髙橋だけではなく、70kg級世界王者の青柳(前述)も参戦を表明済み。過酷な闘いが予想されるが、「挑戦者ですから、気負うことなく向かえるかな、と思うんです」と言う。基本は、相手が世界王者だからと意識するのではなく、「自分のスタイルを心がけること」と言う。
8月のU20世界選手権(ブルガリア)では、初出場ながら銅メダルを獲得。「負けた選手(UWW=ロシア)は十分に勝てる相手だった」との感触があり、世界へ飛躍するベースもできている。だが、国内の激戦を勝ち抜かない限り世界進出もできないわけで、今は国内の壁を破ることに全力投球。グレコローマンの技術習得とパワーアップに取り組んでいるインターハイ3連覇選手が、日本一を目指す!