1996年アトランタ・オリンピック銅メダリストの太田拓弥さん(日体大卒)が2005年に立ち上げたダウン症の人を対象とした「わくわくレスリング教室」。11月15日、東京・自由ヶ丘学園高校で行われた週1回の教室に、2021年東京オリンピック金メダリストの須﨑優衣選手(キッツ)が約1年ぶりに訪れて指導した。
選手たちはオリンピック金メダリストとの再会、あるいは初めての対面に喜び、いつも以上に気合が入った様子。須﨑選手は、前回の来訪で教えた腕取りからのタックルがしっかりできていることに驚き、練習試合では、最近の流行とも言える相手の両脚の間に頭を入れてのアンクルホールドが飛び出ると度肝を抜かれたような表情へ。
レスリングを純粋に楽しんでいる選手に接して「初心に戻れます。だれもが笑顔で楽しんでレスリングをしているので、パワーをもらいました」と気持ちを新たにした様子。以前に教えた技ができていたり、やろうとしている姿を見て「とてもうれしかったです。スケジュールがあれば、今後も来たいです」と話した。
自身は今月8日にモスクワで世界のトップ選手が集まってのプロ・イベントに参加し、満員の観客の中で自身の強さをアピールしたばかり(関連記事)。「世界トップ選手が集まり、いろんな国から応援に来ている華やかな舞台で、自分のレスリングができて勝つことができました。目的だった『全日本選手権に向けて自信と勢いをつける』が達成できました」と、気持ちは盛り上がっている最中。
全日本選手権には、この教室の選手も応援に来ることが予想され、「パワーをもらって、優勝します」と気持ちを新たにした。
太田代表は、コロナの真っ最中でも選手からのリクエストを受けてリモートで練習を指導。2021年秋から少しずつ活動を再開し、福島のチームと合同練習するまでに復活させた(関連記事1、関連記事2)。来年春には、京都・立命館のクラブと合同練習をやる予定のほか、夏には高校時代の恩師(大澤友博氏=2023年9月死去)の故郷・八丈島で夏合宿をやる計画だと言う。
20年以上にわたって続けるのは、強い情熱がなければできないことだが、「選手や保護者にとって、レスリングが生活の一部になっているんです。コロナでできないときでも、『やりたい』という声が挙がるほどでした」と、選手たちの強い希望に後押しされてのことと強調する。
保護者から、レスリングをやるときは目の輝きが違っていることや、帰宅して必ず「必ず『楽しかった』と言います」とのことが報告されるそうで、今後もその期待にこたえたいと言う。
この日は2分2ピリオドの練習試合を実施。スパーリングとは違う闘いには気持ちが盛り上がるようなので、かつて実施した「わくわくカップ」の復活が今後の目標。「メダルや表彰状があれば、もっと違う」として、選手のモチベーションのためにも、大会復活をあらためて目標に掲げた。