インドの複数のメディアが報じたところによると、米国やロシアで盛んに行われているレスリングのプロ・イベントが、インドで復活することになった。
インド・レスリング連盟(WFI)は、2018年までインド各地で行われていたプロ・レスリング・リーグ(PWL=現在、ロシアで行われている同名の大会とは無関係で、試合方式も違う)を来年1月に復活させることを発表。躍進を続けるインドのレスリングをさらに発展させ、女子選手の活躍の場をつくることで男女平等の促進と女子の強化に貢献することを目指すという。
インドのプロ・リーグは2015年にスタートした男女の国内外混成チームで競う団体戦。2017年は賞金総額300万ドル(約3億900万円=当時、以下同じ)で、それまでの最高だったゴールデン・グランプリ決勝大会(アゼルバイジャン)の総額42万ドル(約4,326万円)を大きく上回るレスリング史上最高の賞金大会として存在した。
2016年リオデジャネイロ・オリンピックの男子フリースタイル57kg級王者のウラジーミル・キンチェガシビリ(ジョージア)の場合、出場するだけで約820万円(注=リーグ全試合を通じてと思われるが、詳細は不明)、同女子53kg級のヘレン・マルーリス(米国)は約785万円をそれぞれ手にした。チームが優勝すれば、さらに多額の賞金が受け取れた。
人気もすごく、2018年大会は36時間を超えるテレビ中継があり、のべ8億5000万人の視聴者数を記録。同国の人気競技のカバディを超えたとの数字もあり、最もメジャーなクリケットに次ぐ人気を得たとも言われた。しかし、2019年にWFIとプロ・リーグの主催者との間に金銭問題をめぐってトラブルが発生して関係が悪化。同年は行われず、以後、実施されていない。
このほど、官民連携で復活が決まり、透明性を高めるためWFIが直接管轄するという。試合方式は6チームによる団体戦で、「インド選手5人・外国選手4人」「男子(フリースタイル)5人・女子4人」の9階級での闘い。男子は57・65・74・86・125kg級、女子は53・57・62・76kg級が行われる。
スケジュールやチーム構成、海外からの参加者は近日中に発表予定。2018年大会までは、25ヶ国を超える国の選手が参加した。オリンピック金メダリスト、マルーリスらの闘いが全国に流れて女子の普及につながり、現在のU15から20世代の女子の世界的躍進につながったと言われている。
日本協会にもオファーはあったが、こうしたイベントに出場する空気がなかったためか、大会のある冬季は全日本チームの活動を優先したためか、出場した日本選手はいなかった。現在は米国やロシアのプロ・イベントに出場する選手が出ており、今後の大会には日本選手の出場も予想される。(下記は、「ハリャナ・ハマーズ」が優勝した2018~19年大会の優勝動画)
WFIのサンジャイ・クマール・シン会長は「PWLは、オリンピックやアジア大会ほかの国際大会でメダルを持ち帰るインドの未来のチャンピオンたちの育成の場となるでしょう」と期待。
ダヤーン・ファルーキ大会会長は「インド・レスリングの新時代の幕開けです。レスリングをインドの誇りにし、チャンピオンはインドから生まれると信じてもらうことを目指しています」と、アキル・グプタCEOは、大会の選手第一主義を強調し、「契約、報酬、選手の経済的安定(宿舎・食事のことと思われる)を確保し、試合に専念できる体制を構築している」とコメントした。
スポーツサイト「The Wire in」は、女子選手を州レベルから国際レベルに飛躍させることを期待する一方、地方ではトレーニング施設が十分でなく、スポーツに打ち込めない社会的制約、メディア報道がまだ足りないことを指摘。解決すべき課題を挙げ、選手育成からファンを引きつけるだけの宣伝活動まで、多くの分野の充実が必要と訴えている。
いずれにせよ、人口14億6,000万人で経済成長を続けるインドが、レスリングのメジャー化のため力強い一歩を踏み出した。
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