部員が減少し、二度にわたって廃部の危機に直面した東農大が(関連記事1、関連記事2)、2025年全日本大学選手権で3選手が5位に入賞。復活が順調に進んでいることを証明した。
その一人、97kg級の吉田拓真(1年=青森・八戸工大一高卒)は3試合を勝って準決勝へ進出。そこで吉田泰造(日体大)に敗れ、3位決定戦でも金澤空大(早大)に屈してメダルを逃したものの、学生のトップ選手との対戦を2試合も経験する貴重な大会となった。
今年4月のJOC杯ジュニアオリンピックU20で3位に入賞し、国民スポーツ大会でも5位に入賞している。だが、前者は高校生相手の勝利を含めて2勝しての3位であり、後者は1勝しての5位。今回は同じ大学生と5試合を闘っての5位で、内容的には今回が一番いい成績。「こうした大会で3位決定戦まで行けるとは思っていなかった。とてもうれしいです」と、敗れたとはいえ達成感があった5位だった。
ただ、最後の2試合は実力差があり、「迫力からして他の選手とは違った」と言う。準決勝で闘った吉田泰造とは同学年。高校時代、吉田泰造がフリースタイルの試合に出てきたとき、同じ階級にエントリーしたこともある(2024年インターハイなど)。しかし、自分が早々と負けてしまって闘うことはなく、今年、相手がグレコローマンで世界3位に駆け上がるなど大きな実力差ができてしまった。
実際に闘ってみて、「この選手を止める選手って、出てくるのかな」と思うほどの強さ。前に出てくる圧力が強く、自分が何かを仕掛けようとしても「余裕をもって対処された」とのこと。それでも「技のクオリティーを上げたり、組み手のバラエティーを増やして、少しでも差を縮められるように頑張りたい」と前を向いた。
高校時代は、全国大会に出ることができても上位に行くことはできなかった。進学先に東農大を選んだのは、国内唯一の農学系総合大学として、卒業生の活躍など社会への貢献で高い評価を得ていることが大きかった。レスリング中心の大学生活を送るつもりはなく、勉強もしっかりして社会に出たいという気持ちと一致。
推薦入学が復活したばかりで、2年生が最上級生というチームながら、自主練習もしっかりこなし、今大会の成績につなげた。「他の大学へ行った同期の選手には負けたくない」という思いも強く、この大会で少し芽生えた自信をもって、「次は、大きな大会での3位を目指したい」と目標を定めた。
東農大の三浦正司監督は「1、2年生のチームで、よく頑張ってくれました」と、メダルは逃したが3選手が3位決定戦へ進んだ健闘をたたえた。部員が1人という時期(2023年)を経験しているだけに、11人の選手が汗を流す現在のチームが頼もしそう。
短期間での実力アップを「若いチームなので失うものがなく、恐れることなく向かっていけたことがよかったと思います」と分析。団体戦が組めなかった高校出身の選手もいて、リーグ戦出場などチームで闘えることに「やりがいを感じている面もある」と言う。
ときに明大や専大への出げいこもして実力アップをはかっており、今の2年生が最上級になる2027年が、ひとつの目標となろう。個人では全日本選手権や全日本選抜選手権に出場すること、団体戦ではリーグ戦の二部リーグで優勝して一部リーグに昇格することを目指す。