(文・撮影=布施鋼治)
四男アラシに続け-。2025年全国社会人オープン選手権・大会初日(11月1日・埼玉県富士見市総合体育館)、男子フリースタイルの部では74kg級の長男アミンと97kg級の次男ケイワン(ともに三恵海運)の吉田兄弟の活躍が目立っていた。
圧巻だったのはアミンの準決勝。寺地智睦(法政クラブ)を相手に、一時は1-10とあと1点を取られたらテクニカルスペリオリティ負けというところまで追い込まれた。アミンはそこから怒とうの反撃を見せ、最後は11-10と大逆転勝ちをおさめた。
「セコンドに就いてくれた藤本健太監督と父(市川コシティクラブを運営するジャボ・エスファンジャーニ氏)の声援のおかげで、途中から相手がひるんでいくのを感じた。そこはセコンドに感謝したい」
続く決勝は金子将大(トラスト)にフォール負けを喫したが、アミンは復活への足がかりを作った。
「去年の12月、初めて天皇杯(全日本選手権)に出て、当初はそこで現役生活に一区切りつけるつもりだった。でも、弟(アラシ)の活躍を見て、まだ辞められない、という気持ちになった。去年の天皇杯は初戦敗退だったので、当面の目標は天皇杯か明治杯(全日本選抜選手権)での1回戦突破です」
一方、ケイワンは4試合連続フォール勝ちという圧巻の強さを見せつけ優勝した。「97kg級では身長が低い分、大きな技を仕掛けると、逆に返されてしまう危険がある。そのリスクを回避するためには、どれだけ相手の体力を削って自分のパターンに持ち込み、点数を重ねられるかが重要になってくる」
アミン同様、今大会では同じ階級でも世界を舞台に活躍中のアラシのアドバイスが大いに役立ったという。
「兄弟だからレスリングの形は似てる、アラシとは差したりするところが似ているので、得られるところがたくさんある。兄弟だから腹を割って話せる。アドバイスを求めたら、ダメなところもしっかりと指摘してくれるのでプラスになっています」
今大会を制したことで、ケイワンは全日本選手権に出場する権利を得たが、このまま97kg級にエントリーすればアラシとバッティングする可能性がある。父のジャボ氏は「本人と話し合うけど、ケイワンには125kg級に出てもらいたい」と話す。
吉田家は6人兄弟。そのうち5人は今もマッチの上に立つ。大会最終日(11月2日)、女子62kg級には2025年U20アジア選手権・男子フリースタイル70kg級で銅メダルを獲得した吉田アリヤ(日大)と双子の吉田ロヤ(日大)も出場していた(注=女子は学生も出場できる)。
世界でも注目される存在になりつつあるアラシの活躍に、他の兄弟たちも発奮しないわけにはいかない。