昨年の大会で育英大に王座を奪われた日体大が、今年は3階級を制し、優勝選手数では育英大に及ばなかったものの、大学対抗得点で上回って王座を奪還した。
もし、130kg級の決勝でバトバヤル・ナムバルダグワ(育英大)が優勝していたり、日体大選手にとって最後の試合(60kg級)で金澤孝羽が敗れたりしていたら、この優勝はなかったという薄氷を踏む思いでの王座奪還。松本慎吾監督は「総合力で勝つことができた」と、2.5点差の優勝に安堵の表情。育英大が対抗得点で0点の階級が2階級あったのに対し、日体大は全階級で得点を獲得。まさに「総合力の優勝」だった。
その中でも、1年生で世界選手権3位の82kg級の吉田泰造は言うに及ばず、55kg級の森下大輔、60kg級の金澤孝羽の2年生が優勝してくれたことは明るい材料。高校時代に全国王者のなかった87kg級の鬼塚 一心と67kg級の直井夢希の2年生も、それぞれ2位と3位に入り、「次の世代の頑張りが、今回の結果であり、今後につながっていくと思います」と言う。
U23世界選手権と重なって全日本選手権2位・学生王者の磯江大成(87kg級)を起用することができなかった事情がある。「そうでなければ、もっと楽勝だったのでは?」との問いに、「それは育英大も同じ(60kg級で過去2度優勝の五味虹登がU23へ)。2番手、3番手の選手がこうした舞台で活躍し、チャンスをものにすることで、次のステージへ進める」と話す。こうした状況も前進のエネルギーととらえることが、飛躍につながるのだろう。
下級生の活躍で、昨年は優勝を逃した日体大グレコローマンの復活は間違いないか? 同監督は苦笑いを浮かべながら、「育英大とはいいライバル関係。お互いが切磋琢磨する中で、日本のレベルが上がっていければいいと思います」と話し、一強独占ではなく、複数大学が覇権を争う状況を熱望。
大学対抗得点で3位になった山梨学院大の高橋侑希コーチから「フリースタイルの選手も積極的に出して大会を盛り上げたい」と伝えられたそうで、「(専門の)スタイルに関係なく競い合うことが、日本の底上げになる」と話し、考えていることは自チームのみの発展ではなく日本全体の強化だ。
そのためにも、来月の全日本大学選手権(8~9日、大阪・堺市金岡公園体育館)では、山梨学院大に大差をつけられた昨年の雪辱をしなければならない。「今大会以上に厳しい闘いになると思いますけど、しっかりと準備して臨みたいと思います」と気を引き締めた。