2025.10.09

【2025年国民スポーツ大会・特集】豪快なリフト技が爆発! 地元優勝に貢献したや藤井達哉(滋賀・滋賀県スポーツ協会=栗東高卒)

 2025年国民スポーツ大会の最後は、地元の大声援が会場に渦巻いた。最終日の成年男子グレコローマンで、87kg級の藤井達哉(滋賀・滋賀県スポーツ協会=地元の栗東高卒)と130kg級の奥村総太(滋賀・自衛隊=同が優勝。地元の総合優勝へ大きく貢献した。

 藤井は3年連続の優勝で、全部門を合わせた最優秀選手に選出され、故郷に錦を飾った。今年6月の全日本選抜選手権でも2位に入るなど、全日本の大会では何度も上位に顔を出している選手。優勝には縁ががなかったが、2019年に全日本学生選手権3連覇を達成し、一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」(文武両道を実践し、他の模範となる運動部学生)の最優秀賞を受賞。文武両道を実践してきた。

▲よほどうれしかったのだろう、決勝で勝った瞬間、珍しく小躍りして喜んだ藤井達哉

 地元での活躍に「ホッとしました。地元の国スポは、そう経験できるものではない。勝ててよかった」と話し、選手時代に1度あるかないかという機会をものにできたことに、安堵の表情。決勝のみならず、準決勝までにも豪快なリフト技がさく裂した。「命かけてやってきましたから」と苦笑しながら、会場を沸かせられたことがうれしそう。

 優勝の要因を問われると、「地元の声援ですね」と即答。技術的には、リフト技の調子がよかったことを挙げ、「やってきたことが出せました」と振り返った。大会前半のフリースタイルで、青学大時代の同期生の成國大志(滋賀県スポーツ協会)が優勝し、「刺激になりました。世界選手権から帰ってきて、すぐだったにもかかわらず出てくれ、優勝までしてくれたわけですから」という要素も、発奮につながったようだ。

▲初日の準々決勝からリフト技を爆発させた

▲今年のU23世界選手権代表との決勝も、豪快なリフト技で快勝

世界選手権代表に勝った実力者、引退は早い!

 昨年までは後藤回漕店の支援を受けてパリ・オリンピックを目指した。その契約も終わり、今年5月から滋賀県スポーツ協会所属へ。「この大会を選手活動の集大成と考えてきました」と、地元の国スポにかけてきた。この大会の約1ヶ月後にある全国社会人オープン選手権にもエントリーするなど、選手活動を終えるつもりはないが、さすがに今は2028年ロサンゼルス・オリンピック出場は「視野にない」と言う。

 4月からは地元での働き口も内定。社会人選手として活動を続けつつ、地元レスリング界の発展に力を尽くすことになりそう。「後進育成は滋賀県出身選手の役割だと思います。今大会のいい流れを途切れさせることなく続けていきたい」と言う。

 ただ、今年6月の全日本選抜選手権は、優勝した阪部創(自衛隊)にノルディック方式の予選リーグで勝っており(決勝での再戦で敗れて2位)、全日本レベルで通じる実力はキープしている。28歳は、まだ引退する年齢ではあるまい。同期の成國が両スタイル世界王者を目指すことを宣言しているのだから、なおさらだ。

▲今年6月の全日本選抜選手権では、決勝のマットに上がった藤井達哉(赤)。日本トップレベルの実力をキープしている=撮影・矢吹建夫

 栗東高校時代の恩師の田中秀人・県レスリング協会理事長は、滋賀県の総合優勝に大粒の涙を流した。後進の育成も大事だが、教え子が世界へ飛躍することで涙を流させてやるのも、恩返し。まだ出身選手としてオリンピック代表が生まれていない滋賀県から(注=所属選手はいた)、オリンピックを目指す姿勢を見せるのも“後進育成”のひとつと言えよう。

 UNIVASと国民スポーツ大会のW最優秀選手の今後が期待される。