神奈川県レスリング協会
競技力向上推進委員会
高校入学後にレスリングを始めた選手を対象とした「AWATA CUP レスリング選手権」の第2回大会が2025年9月21日、神奈川・釜利谷高校で行われました。
本県は、年々ジュニアレスリングも盛んになってきており、10年ほど前から、県主催の合同練習会も多く実施し、強豪県の一部として全国で活躍できる多くのジュニ・アレスラーを輩出しています。しかしながら、半面、途中で競技から離れたり、高校から競技を始める選手の減少が顕著に見られているのは、本県だけの課題ではないでしょう。
神奈川県では、かつて9月に高校新人大会の前哨戦として、1・2年生による「学年別大会」を実施していました。しかし、競技人口の減少から、試合数も少なく、レベルの差の問題、また同所属同士の対戦が多くなるなど、育成・強化の効果も薄れていることを感じていました。
昨年の大会から、男女中学生および高校女子、そして男子は高校スタート選手に参加対象を広げ、中学生の強化とともに中高生の対戦ができる「U15-17」大会を試験的に行いました。しかし、やはり”経験値がものを言う”中学生には歯が立ちません。
検討を重ねた結果、経験者と初心者では「闘う世界を別にしよう!」「高校からスタートした選手が、経験を積む場、成功体験を感じる大会にしよう!」として、今回は、希望のあった宮崎県、三重県、東京都、茨城県の高校が参加し、76選手が集いました。
競技方法は、現体重でのエントリー、体重別に分けた原則4~5名のリーグ戦とし、なるべく他所属との対戦ができるよう、組み合せを配慮しました。リーグ戦のため、スコアシートを事前に準備できるなど、業務の軽減にもつながりました。
計量を行わないため開始時間を早めることができました。試合の反省をいかせるよう、終了後は、国スポ代表選手も集合し、スパーリングの時間を設けました。女子(経験者可)を含め全19階級、全120試合(2面)、スパーリング1時間半。昼休憩を取りながらも15時には終了することができました。
近年、経験者と初心者の競技レベルの差が大きく、「レスリングは、頑張れば全国各地に行けるよ」などの部員勧誘の文句が通用しなくなるほど、高校からの普及活動が難しくなってきています。
しかし、昔に比べると、一般社会では「レスリングは生涯スポーツ」と呼べるなど、社会人が楽しくレスリングに触れる機会、勝ち負けよりも楽しんで試合をするという考え方が増えてきたように感じます。
勝つための朝練や毎日の厳しいトレーニングも必要ですが、週に数日、レスリングが大好きな生徒が集まり練習する。高校部活動でもそのような世界があってもいいのではないか。初心者が過酷なトレーニングを積んでも、短い高校生活の中で、全国で活躍できたり、ましてや全国に出場することさえ難しくなっている現実があります。
もちろん、そのような目標を掲げ努力をすることは大きな価値があります。しかし、我々大人が、少し考え方を変え、「高校生の普及・継続」を考えるならば、そのような別の土俵があってもいいと思います。
今回の大会では、中学までのレスリング経験者が相手では、とうてい勝つことができないであろう、と思われる選手が、勝つことで喜び、チームが大きく盛り上がる場面が見られました。スコアが24-22(合計総得点46点)という、“乱打戦”もありました。
県レスリング協会・粟田敦会長の閉会式の講評では、「このような試合は、お互いに負けたくない、最後まで試合を諦めない、という格闘技の本質の表れです。大きな評価に値します、ぜひ、あきらめないでレスリングを続けてください」とありました。
高校時代に実績を積めなかった選手でも、大学や社会人で飛躍した選手を多く見てきました。また、活躍できなくても、社会人選手としてレスリングを楽しんだり、審判員として関わったり、家庭を持ち子供にレスリングを習わせる方もたくさんいます。
これも普及です。今回開催した「AWATA CUP」は、まだ練習試合の色合いの濃い大会ではありますが、今後は、会場・運営・表彰等、参加者が満足できる大会として、関東ブロック、全国大会など大きく発展していければと思っています。
神奈川県では全世代に渡り「普及・育成・継続・強化」を同時進行で進めるべく、今後とも検討していきたいと考えます。