(文=布施鋼治)
第1回藤波朱理杯三重県少年少女大会(2025年8月30・31日、三重・四日市市総合体育館)で使用されたマットは4面。いずれも衝立を立てる形でマットサイドで観戦できるようになっていた。小さな体育館での大会は別として、セコンド以外の応援団や一般客が至近距離で観戦できる機会はあまりない。そうした現状をふまえ、もっと間近でレスリングを楽しんでもらう狙い。
ときにはマットサイドで立ったままの状態で試合を観戦していた藤波朱理は言う。「マット近くまで来て応援できるのはジュニアの大会ならではのこと。大人の大会になればなるほど、こういう機会はなくなっていくので、私自身、なつかしいという思いもあれば、この方が盛り上がると思いましたね」
大会に出場したキッズ・レスラーにとって、パリ・オリンピックで金メダルを獲得し、今もなお連勝記録を更新し続ける藤波の存在は絶対的な存在だ。藤波と同じいなべ市の出身で、藤波も注目する中学女子44㎏級の平山栞那は「(自分は)INABEに所属していて、藤波朱理さんの大会だったので出ることにしました」と語る。
ご当地から誕生したヒロインの記念大会を盛り上げようと、INABEアカデミーからは出場した71のクラブのうち、最多の26選手がエントリーした。
「パリ・オリンピックの決勝は、いなべ市で行なわれたパブリック・ビューイングで見ました。金メダルを取った瞬間はすごくカッコいいと思いました」(平山)
ヘアースタイルも、藤波朱理のそれとそっくりな出で立ちでマットに上がっていた小学校5・6年生女子の部の今井園乃(ARC)は「もともとあこがれの選手だったので、そのあこがれの選手の大会に出てみたかった」と出場動機を話す。「藤波選手の魅力? 強いし、かわいいし、面白いし、優しいし。本当、全部が魅力だと思います」
今井と同じ所属で小学校3・4年生の部30㎏級に出場した須崎悠斗は藤波のタックルを模倣していると語った。「藤波選手の魅力はタックルが速いところ。真似できている? まあまあですね(微笑)」
香川県の高松クラブで汗を流す小学校5・6年生の部32㎏級の三柳圭司朗は「藤波選手の名前(冠)が入っているし、強い選手も出ると聞いたので、自分も出ることにしました」と語る。
藤波の魅力について聞くと、三柳はタックルの速さととともに「基礎ができているところ」を挙げた。「構えが崩れない。ネットで藤波選手の動画が上がっているので、結構見ています。将来は吉田沙保里選手を超える存在になってほしい」
この日、三柳は初めて間近で藤波を目の当たりにした。その感想を聞くと、驚きの表情を隠さなかった。「(思った以上に)身長が高かったし、筋肉もありましたね」
キッズレスラーの目から見ても、53㎏級から57㎏級への転向を計る藤波の肉体改造は順調に進んでいるようだ。いずれにせよ、大会に出場したキッズ・レスラーたちにとって、この2日間は最高の思い出になったのではないだろうか。
その思い出がレスリングで強くなるモチベーションとなり、未来のオリンピアンを誕生させるかもしれない。大会実行委員会は、来年も8月の最終土・日曜日に第2回藤波朱理杯の開催を計画している。(今大会は、9月28日深夜、東海テレビで放映予定)
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