来月の世界選手権(13~21日、クロアチア・ザグレブ)に出身選手3人を送る東京・MTX GOLDKIDS(成國晶子代表)が8月28日、杉並区のジムで、今夏のキッズ&高校選手の祝賀会を兼ねて壮行会を開催。3人の日本代表選手が若い選手と保護者の応援を受け、健闘を誓った。
世界選手権に出場するのは、男子フリースタイル86kg級の石黒隼士(自衛隊)、同92kg級の石黒峻士(MTX GOLDKIDS)、男子グレコローマン72kg級の成國大志(筒井メディカルグループ)。
石黒隼士はパリ・オリンピックを入れると4度目の世界大会で、同オリンピック以来、約1年1ヶ月ぶりの国際大会。兄の石黒峻士は2階級にわたって5年連続の世界選手権出場で、兄弟同時出場は2021・23年に続いて3度目。2022年にフリースタイル70kg級で世界王者に輝いた成國は、グレコローマンでは初の出場となる。
■男子フリースタイル86kg級の石黒隼士「パリ・オリンピックにかけてきたので、2回戦で負けたショックが大きかった。なかなか立ち上がれず、自分の努力と金メダルを取るという目標の差に絶望を感じました。引退も考えましたが、アメリカに行ってレスリングに対する違った向き合い方に接し、勝つだけではなく、楽しむという方向に視野を広げてやっていけるようになりました。今までは勝つことに徹していたので、楽しむことは妥協であり甘え、という気持ちもありました。
うまくいかないからといってやめるのは、違うと思いました。うまくいかないからこそ続けようと思っています。今度の世界選手権は、勝つことだけを目標にするのではなく、やってきた技を出す、応援していただいている人にパリからの成長を見てほしい、と思っています。結果と自分のレスリングでこたえたい」
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■男子フリースタイル92kg級の石黒峻士「私は勝ちに徹してきた弟と違って、もともと楽しみながらレスリングをやっていました。自分のペースでやってきたからこそ、ここまで来られたのであり、若いうちから勝つことだけを考えていると、気持ち的に続かないことの方が思います。社会人になって企業に所属して競技を続けましたが、『負けては駄目だ』という気持ちが強くなりすぎ、結果が出ず、練習も辛くなる、という状態になっていました。
アジア選手権や世界選手権では、相手の戦歴を調べて、まあ世界チャンピオンと1、2回戦で当たることが多かったのですが、負けたときの言い訳を考えていました。その考えでは世界で勝てないことを、やっと気がつきました。勝っていく選手は、そう考えていない。企業から離れ、これまでより練習量は減っていますが、限られた時間だからこそ考えてやることができ、今年のアジア選手権で銅メダルを取ることができました。自分の好きなようにやれば、世界で闘っていけると実感しましたので、世界選手権では自信をもって自分のレスリングをやり、優勝を目指します」
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■男子グレコローマン72kg級の成國大志「(壮行会ですが)まず選手としてではなく、(文化学園大杉並高の監督として)後に続く選手と親御さんに伝えたいことを話したい。応援される選手になってほしい、ということです。負けたときに、どれだけの人がそばにいてくれるかが大事なことです。勝っているときに多くの人が集まるのは、当たりまえの世界。負けたときに自分のそばにいてくれる人を大切にしてほしい。そういう選手になるにはどうすればいいか、というと、頑張っている選手に応援が集まるのだと思います。
勝ち続けて『練習しなくても勝てる』と思っている選手には、だれもサポートしない。私も分かるし、周囲も分かる。そういう選手になってほしくない。親御さんには、努力している選手を応援してほしいと思います。強くなってほしいと思うからこそ私も厳しいことを言いますが、選手を本当にサポートしてやれるのは親だと思いますので、よろしくお願いします。世界選手権には、初めて3人での出場となります。いい報告ができるようにベストを尽くします」
会の途中には、日本レスリング協会のアスリート委員長就任が決まったパリ・オリンピック・男子フリースタイル74kg級銀メダリストの高谷大地(自衛隊)が、サプライズ特別ゲストとして参加。「成國代表に無茶ぶりされましたので、どこにでも現れる男として激励に来ました」とのこと。
「ここにいる方々(キッズ選手・保護者)にとって、勝った負けたではなく、代表選手の試合を見られることが幸せなんです。1試合、2試合と見られ、決勝まで見られたら最高ですけど、元気に闘って笑顔を帰ってきて、現地の話をしてくれることが一番です。気負うことなく闘ってください」と、世界へ挑む3選手にエールを送った。
杉並文化学園高は全員が同クラブの出身選手で、3月末の全国高校選抜大会の学校対抗戦で東京都のチームとして初優勝を遂げた。インターハイは学校対抗戦での出場を逃したが、51kg級の廣橋悠貴が優勝し、80kg級の秋保大地が2位へ。全国高校グレコローマン選手権でも、71kg級の安威永太郎が3位、同級の山田航大が5位に入賞。
U15アジア選手権で女子33kg級の内田奈那が2位、男子フリースタイル85kg級の秋保光が3位と国際舞台でも活躍。秋保は全国中学生選手権で優勝した。全国少年少女選手権でも、女子6年44kg級で4連覇を達成した古田乙峰を含めて「金2・銀1」を取った。
高校3年生は全員が大学へ進んでレスリングを続ける予定で、国民スポーツ大会など今年度後半の大会を燃えつつ、進学後の飛躍を誓った。
成國代表は、今年の文化学園大杉並高校の全国優勝を、各選手のキッズ時代から10年近くをかけて育てた結果であることを話し、「本当に誇らしかった」と涙ながらにあいさつ。石黒兄弟をはじめ、自分に出会っていなければレスリングをやっていなかった選手がたくさんいるわけで、勝たせられた選手がいれば、勝てるのに勝たせられなかった選手もいて、苦しいこともたくさんあり、「いろんなことがありましたが、このような会を開くことができて本当によかった」と感無量の表情。
今の小学生を育てていけば、何年かあとにも同じように全国で団体優勝できる可能性があるわけで、「その思いを胸に頑張っていきたい」と言う。まずは、世界選手権に臨む3選手に「楽しんで世界選手権のマットに立ってください。応援する人がたくさんいることを忘れないでください」と、間もなく進学する高校生には「大学へ行ってからも頑張ってください」と、それぞれエールを送って会を締めた。