2025.08.28

【2025年全日本学生選手権・特集】目標は姉弟でのオリンピック優勝! “銀&銅コレクター”返上の向田旭昇(専大=男子フリースタイル61kg級)

 学生や全日本の大会で2位や3位が多かった男子フリースタイル61kg級の向田旭登(あきと=専大)が、今年3月のU23全日本選手権に続いて全日本学生選手権(インカレ)を制覇。「シルバー&ブロンズ・コレクター」を返上し、世界への飛躍の足がかりをつくった。

▲2人の同僚(島崎翔悟、高原崇陽)の優勝に刺激され、最後の夏に学生王者に輝いた向田旭登

 「めちゃくちゃうれしいです。初めての全国大会優勝ですから」。2022年に専大に進学し、2年生の東日本学生選手権(春季)・新人戦での優勝はあるが、全日本と名がつく大会は、上位には行くものの、優勝に手が届かなかった。今年が学生の最終年。最後のインカレは、準決勝までの5試合はいずれも第1ピリオド、無失点のテクニカルスペリオリティ勝ちという実力の違いを見せつけての勝利。

 決勝は、6月の全日本選抜選手権の2回戦で8-5で勝っている赤嶺明柳(日体大)が相手。リベンジに燃える赤嶺との再戦は一進一退で、アクティビティ・タイムの取り合いで自分有利の1-1となって残り時間2分。そのあと、タックルで2点を取り、場外ポイントを取られて3-2へ。残り34秒を守り切った。

 この大会では同期の2選手(男子グレコローマン63kg級・島崎翔悟、男子フリースタイル79kg級・高原崇陽)が自分の決勝の前までに優勝を決めていたので、「遅れをとりたくない。一緒に優勝したい」という気持ちを持って決勝のマットに上がったそうで、それがいい方向へ作用した。

▲決勝戦、1-1から貴重な片足タックルを決めた

 「自分は攻撃するレスリングが得意で、片足タックルからアンクルホールドがよく決まりました」と、準決勝までの5試合の51-0を振り返る。決勝は、さすがに簡単には勝てなかったが、準決勝までの勢いとチームメートの踏ん張りが後押ししたようだ。

重荷にはならなかった姉の躍進、「刺激されています」

 三重・四日市ジュニア時代の2018年全国中学生選手権で2位で(このときの王者は今大会65kg級優勝の西内悠人)、同年の全国中学選抜選手権で優勝し(関連記事)、埼玉・花咲徳栄高へ進んだ。その時点で姉・真優(現姓志土地)は世界チャンピオンに輝いており、東京オリンピックの金メダル候補。当然、弟への注目と期待は高かった。

 しかし、高校時代は全国大会無冠。専大へ進んでも、1年生のときに全日本大学選手権2位の好成績を残したものの、全日本学生選手権JOCジュニアオリンピックを含めて、そこを超えることができなかった。「監督からもきついことを言われました」と振り返るが、腐ったり焦ったりする気持ちはなく、今年、最後の夏にかけたと言う。

▲専大3人目の優勝を達成し、応援席に勝利のアピール

 姉と比較されるのは、すばらしい成績を持っている兄や姉を持つ選手の宿命であり、それが重荷になったり、嫌だという選手もいる。向田の場合は、特に嫌だと感じたことはなく、「レスリング・スタイルが共通する部分もあるし、刺激されていました」とのこと。

 姉は15歳のとき(2012年)に世界カデット(現U17)チャンピオンになり、ユース・オリンピック優勝を経て東京オリンピックで優勝。すばらしい実績をつくった。大きく遅れてしまったが、今年10月にU23世界選手権(セルビア)へ挑むことが決まっており、世界へ初挑戦する。2月には、同じU23の大会である「2025年ペトコ・シラコフ-イワン・イリエフ国際大会」(ブルガリア)に出場して優勝。格好の試運転を経験しているので、今度も好成績を挙げたいところだ、

世界選手権代表の須田宝(山梨学院大)に闘志燃やす

 姉以外にも刺激材料はある。昨年の全日本学生選手権全日本大学選手権の決勝で、ともに敗れた須田宝(山梨学院大)シニア世界選手権(クロアチア)の代表になったこと。須田は今年に入っての国際大会で、アジア選手権を含めて負け知らずで、世界選手権では優勝候補の一角にも挙げられている。「負けてられない、という気持ちです」と闘志を燃やす。

▲昨年11月の全日本大学選手権決勝で須田宝に惜敗した向田(青)。今年12月にリベンジなるか=撮影・保高幸子

 本来なら6月の全日本選抜選手権でリベンジし、自分が世界選手権に行きたかったところだが、決勝で長谷川敏裕(三恵海運)に負けてプレーオフに進めず、闘いの機会がなかった。須田にはシニアの世界王者になってもらい、自身はU23世界王者に輝いて、12月の全日本選手権では世界王者同士の闘いを実現したいところ。「これまであまり海外で試合をしたことないのですが、自分の攻撃スタイルができれば通じると思います」と言う。

 目標は「姉弟でのオリンピック優勝」ときっぱり。そのため、来春の卒業後もレスリングを続ける環境を求め、めどもたっていると言う。その前に、「残る大会(全日本大学選手権、全日本選手権)を1位で終わりたい」と話し、学生での最後の活動に燃える。