2025.08.27

【2025年全日本学生選手権・特集】異色の同門・双子対決が実現、負けた弟はフリースタイルで優勝…本名一晟&帝心(育英大)

(文=布施鋼治)

 2025年全日本学生選手権(インカレ)の第2日(8月22日、東京・駒沢体育館)、男子グレコローマン72㎏級決勝で本名一晟VS本名帝心という育英大選手による異色の同門・双子対決が実現した。

▲全日本学生選手権史上初と思われる双子で決勝を争った本名一晟(右)と帝心

 兄・一晟は昨年の天皇杯全日本選手権同級の優勝者。この大会は2年連続優勝を狙う大本命で、周囲の予想通り決勝に進出した。公式戦での直接対決は今回で3回目とのこと。高校時代にも一度当たり、大学では一昨年のインカレ準決勝でも顔を合わせいる。スタイルはいずれもグレコローマンで、勝敗は専門の強さをいかして兄が2連勝していた。

 第三者からみれば「兄弟対決にはやりづらさもあるのでは?」と勘ぐってしまうが、この兄弟は全くそういう側面を見せることなく、マットに上がると臆することなく勝負に徹していた。「やりづらさ? まったくなかったですね。逆に双子ということで、注目を集めることができてうれしかった」(帝心)。

 結局、3度目の対決も兄がグレコローマン専門というアドバンテージをいかし、9-0のテクニカルスペリオリティで弟を下した。

▲グレコローマンが本職の兄・一晟が勝利

 本名兄弟は現在大学4年。いずれも卒業後は地元の新潟に戻り、兄は高校の、弟は小学校の教員になる予定。ともに残り少ない学生生活となったが、一晟は今年12月の天皇杯全日本選手権で連覇を達成して本格的な選手生活の有終の美を飾るつもりだ。

「育英は女子が強いと言われることが多いけど、男子も強いねと言われるように、最後までチームを引っ張っていきたい」

▲2023年大会の準決勝でも実現している双子対決

男子フリースタイルで弟・帝心が優勝し、兄弟優勝を達成

 本名兄弟の“物語”はグレコローマンだけでは終わらない。第3日からスタートした男子フリースタイル70㎏級にもエントリーした帝心は、6試合を勝ち上がって優勝。兄弟そろってのインカレ優勝を達成し、帝心は相好を崩した。

 「グレコローマンは兄の専門なので、自分は決勝まで行ければ、と思っていました。勝つことまでは考えていなかった(苦笑)。専門のフリースタイルで自分も勝ててうれしい。決勝は最後の力を振り絞って闘うことができました」

▲男子フリースタイルで優勝した帝心、。決勝を含めて6試合中3試合がテクニカルスペリオリティ勝ちだった

 弟も今年の天皇杯を最後に第一線から退くつもりでいる。「来年からは小学校の教員なので、選手活動はあまりできなくなるでしょう。天皇杯で優勝できるように頑張りたい。その後は新潟県の発展に兄弟で尽くしたい」

 指導者に立場を変えた2人には、オリンピック代表をのべ14名も輩出したレスリング強豪県の復活を期待している関係者は多い。近い将来、「越後国に本名ツインズあり」と呼ばれる存在になるか。

▲兄に2日遅れて栄冠を獲得した帝心