2025年インターハイの最後を飾る個人対抗戦・男子125kg級は、会場からどよめきが起こり、大歓声が沸くシーンがあった。学校対抗戦と個人対抗戦の準決勝までを圧勝続きで勝ち上がったリボウィッツ和青(東京・自由ヶ丘学園)が、長谷川大和(大阪・大体大浪商)を攻めあぐむシーンが何度かあったからだ。
リボウィッツの強さが知れ渡っているからこその会場(観客・関係者)の反応。「もしかしたら…」という思いを持った人も少なくないだろう。
苦戦(?)の原因は、体重の違いが大きかったこと。6月の明治杯全日本選抜選手権では大学・社会人選手にも圧勝して2位に躍進したリボウィッツだが、97kg級の選手。対して長谷川は125kg級たっぷりの選手。超高校級の強さを持つリボウィッツと言えども、この階級差には面くらい、思うような攻撃ができなかったようだ。さらに「差しが強く、差しからの展開も強かった」ことも、簡単に勝たせてもらえなかった原因のようだ。
だが、最後は2分17秒、12-1テクニカルスペリオリティで勝って2年連続優勝を達成。学校対抗戦と合わせての11試合の総タイムが598秒(1試合平均54.4秒)。フォール勝ち4試合を含めて総スコアは95-3。全試合を第1ピリオドで勝ち、あらためて強さを見せつけて2025年インターハイのフィナーレを飾った。
「ちょっと苦戦したけど、楽しめて…」と話した後、「重たかった」とコメント。これまでは、どんな相手でも、タックルに入ってしまえばパワーでテークダウンへ持ち込めたが、それができなかった。グラウンドに持ち込んでのローリングも、最後はしっかり決めたが、これも「重たさ」ゆえ、いつものように簡単に回ってくれなかったようだ。
「高校生相手には圧倒的に勝たなければいけない」との思いがプレッシャーとなり、「試合を楽しむことを忘れていた。それが悪い動きにつながったのだと思います」とも振り返る。
我に返ったのは、試合の途中、鼻血を出してしまい、治療のため試合がストップしたこと。これで、「試合展開をよく考えることができました。楽しんで闘おうと思いました」と言う。世界で勝つためには猪突猛進のタックルだけでは駄目だとして、外へ抜けるタックルも練習してきており、それを生かすこともできた。冷静さを取り戻させてくれた“鼻血に感謝”といったこところだ。
世界での闘いでは、125kg級の選手と闘うことはないが、いろんなタイプの選手がいる。どんなタイプの選手にも、瞬時に勝つための方程式を解かねば、勝利は引き寄せられない。その意味では、いい経験となった大会だったと言えよう。
圧勝続きの内容ながら、準決勝で取られた1点を「自分の甘さ」と厳しく自己採点することも忘れない。11試合で3点を失ったことも、意識に引っかかってしまうマイナス点。この先、4日間で11試合もこなすことはないだろうが(全日本学生選手権の両スタイルに出場しても、重量級の場合、11試合の可能性は少ない)、「0点を目指さなければ次につながらないでしょう」と話した。
このあとは、8月17日からブルガリアで始まるU20世界選手権へ向けての闘いが始まる。「3年後のオリンピックに出るためには、ここで優勝しなければならない」ときっぱり宣言しており、日本のあらゆる世代を通じて初の重量級世界王者の誕生が期待される(注=これまでの最重量級世界王者は、2022年U23-86kg級の白井達也)。
※学校対抗戦2回戦 ○[VSU、0:26=10-0]松井 陽人(愛媛・八幡浜工)=写真なし