2025.08.03NEW

【2025年インターハイ・特集】東日本大震災の復興へ向け、「県民の希望になる日を目指します」…ふたば未来学園・砂川航祐監督

 学校対抗戦で初出場を果たしたふたば未来学園(福島)は、初戦の2回戦で土浦日大(茨城)に1-6で黒星。エントリーは5人だが、1人はキャリア数ヶ月で、全国の舞台での闘いは厳しいとの判断で出場を見合わせたので、実質的に4人での闘い。初陣を飾れなかった。

▲試合後、選手に奮起を促すふたば未来学園・砂川航祐監督

 霞ヶ浦(茨城)で主将を務め、日体大柏(千葉)でコーチ、監督も経験していた砂川航祐監督は、学校対抗戦で全国大会に出るのは久しぶりとあって、「楽しかったです」と振り返った。

 選手としても、指導者としても、何度も全国大会出場を経験しているものの、そのときとは状況が全然違い、1から育てたチームでの参加。実は、日体大柏で指導を始めたときにも4人での闘いは経験している(2016年全国高校選抜大会=ベスト8まで進出)。しかし、名匠・大澤友博(昨年9月に死去)がつくり、全国の強豪を集めたチームで、注目されていた。

 今大会は、注目を受けない状況での出場。大会前は、選手をリラックスさせるため、「0-7だけはやめよう。1人は勝とう」と言ったという。55kg級で久保山朔(1年)が勝ったときは、「ホッとしました」と苦笑い。

 同選手は個人対抗戦は県予選で負けているので、学校対抗戦のみの出場。「この6分間に全力を出させました。インターバルのとき、『今年のインターハイはあと3分間だけ。思い切ってやってこい』と伝えて送り出しました」と言う。

▲55kg級の久保山朔が勝ち、一矢報いた

来春、附属中学で育てている2選手が加入予定

 同高は2015年に、東日本大震災の復興教育の一環として、太平洋に面した双葉郡広野町(いわき市の北方約25km)に創立された。レスリング部も同年に創部され、砂川監督が就任。女子を中心に中学からの一貫強化で国際舞台へ飛躍する選手を育ててきた。

 女子では昨年のU17世界選手権で「銀1(筒井双)・銅1(内山陽誇)」を取り、今年のU17アジア選手権でも「金1(保坂樹奈)・銅1(阿久津こはる)」と、世界へはばたいている。

▲茨城・霞ヶ浦高~日体大~千葉・日体大柏監督の経歴を持つ砂川監督。チーム育成の手腕が期待される

 男子がやや遅れてしまった感があり、「うらやましい気持ちや、歯がゆい気持ちもあると思います」と見ている。しかし、肉体的な成長の早い女子に比べ、男子の場合、「伸びるのは高校時代から」との信念があり、焦らせることのない段階を追った強化を心がけている。「1年生の稲葉広人(51kg級)と久保山朔(55kg級=前述)、2年生の佐藤琉青(60kg級)が伸びるのは、これから。楽しみです」と期待する。

 来年は、71kg級の矢口瞳真が抜けるが、附属中学で育てている2選手入る予定。部員数は増え、階級も現部員と重ならないという。今年以上の期待が持てる。山口海輝(2020・21年全日本王者)ら日体大柏高時代の教え子や、日体大の後輩らに福島まで来てもらって指導をお願いすることもあり、心強い味方もいる。

 「今度は出場だけでなく、上位に食い込めるように頑張りたい。福島県の方々にいい報告ができるのは、まだ先になるかもしれませんが、優勝旗とカップを福島に持ち帰り、県民の希望になる日を目指します」と言い切った。

▲男子5選手のチームを支えた矢口瞳真。チームの将来を後輩へ託す