学生レスリング界の雄を争う山梨学院大と日体大が6月28日、横浜市の日体大で合同練習を行った。2023年2月22日に日体大で20数年ぶりに実現した“頂上練習”(関連記事)は、昨年9月28日に山梨学院大でも実施し(関連記事)、今回が約9ヶ月ぶり。日体大にはウクライナから男子フリースタイルのトップ選手が練習に来ており、“国際合同練習”となった。
日体大の松本慎吾監督は午前、午後の2度の練習を終え、「お互いが刺激をもらい合い、緊張感のあるいい練習ができました」と振り返った。2校、3校が集まって合同練習や合宿することは珍しくないが、ここ数年、東日本学生リーグ戦と全日本大学選手権の覇権を競い合っているライバル・チームだけに、気合の入り方は尋常ではない。「こうした気迫十分の練習が大学レスリング界のためになり、日本レスリング界のレベルアップにつながると思います」と言う。
タイミングよくウクライナ・チームが来日していたので、「これまで以上に充実した合同練習になりました」とも話す。日程の調整がつけば、「年2回、3回とやっていこう」という話にもなったそうだ。同監督は「2校だけではなく、他大学も含めてこうした練習機会ができればいいと思います」と計画する。
今回の“声かけ”は松本監督だったそうで、山梨学院大の小幡邦彦監督は「断る理由はない。大歓迎でした」と応じた。「競技力向上のためには、ハイレベルで同じくらいの実力を持っている2チームが競い合うことが必要です。ウクライナ・チームもいて、とてもいい練習ができました」と言う。
5月の東日本学生リーグ戦で日体大から王座を奪還。このあと、8月の全日本学生選手権(個人戦のみ)を経て11月の全日本大学選手権でチームとして再度雌雄を決することになるが、まだ手の内を隠す時期ではない。「お互いが技をかけたり、かけられたりする中で、攻撃も防御も向上していく」と話し、選手にはやられることを恐れずに自分の技を試すことを望んだ。
全日本合宿のとき以外は各チームを循環指導している日本協会の井上謙二強化本部長も姿を見せた。「お互いが持っているものを出し合い、大学の枠を超えて上を目指そう、という選手の気持ちが伝わってきました」と話す。
全日本合宿でも複数チームの選手による激しい切磋琢磨があるが、トップ選手に限られる。この合同練習では下級生同士も競い合える。昨年まで高校生だった選手が他大学のトップ選手に挑む姿も印象深かったそうで、「高い目標を持って頑張ってほしい。この激しい練習が日本レスリング界の実力を押し上げてくれると思います」と期待した。
日体大の髙橋海大主将は「いつもの練習と緊張感が違います。ふだんの練習では(チームメートに)かけることができる技でも、緊張感もあって、かからなかったりもする」と話し、試合に近い精神状態となる練習の効果を話す。
肉体的にも精神的にもふだんの練習以上に疲れたとのことだが、1週間前に世界選手権の代表を決めたばかりで、「そのときに出てきた課題を試す最高の機会になった」と言う。
山梨学院大の荻野海志主将は「ピリピリした雰囲気の中で、いい練習ができたと思います」と振り返る。同大学の選手はエントリーミスによって全日本選抜選手権に出場できなかったこともあり、「自分を含めて、どの選手もその悔しさをぶつけ、(日体大の)代表に決まった選手などを相手に自分の実力を試し、技術の確認をしたと思います」と話した。
過去2度の合同合宿にも参加しているが、「ライバルではあるけど、お互いに強くなろう、高みを目指そう、という気持ちが出てきました」と、交流によって2チーム間に団結力が出てきたことも感じたそうだ。「卒業までに、あと1回はやりたい?」という問いに、「1回と言わず、何回でも、状況が許す限りやりたいです」と、両チームで競い合うことを望んだ。