2025.05.17NEW

【2025年西日本学生春季リーグ戦・特集】オリンピック・パワーで強化! “4度目の正直”で一部残留を果たした帝塚山大

 三恵海運でオリンピック金メダリスト育成に貢献した鈴木貫太郎監督を迎え、4度目の一部での闘いとなった帝塚山大は、7・8位決定戦で中京学院大を破り、“4度目の正直”で一部残留を決めた。

 初日に福岡大を破る貴重な白星。4チームのリーグ戦の場合、「3勝、2勝1敗、1勝2敗、3敗」で順位が決まることがほとんどなので、この段階で「予選リーグ3位、最下位はなし」が濃厚だった。周南公立大がまさかの2敗を喫したことで1勝2敗で3チームが並び、勝ち数の差で4位となって7・8位決定戦へ。そこで負ければ二部Uターンとなる状況となったが、かろうじて踏みとどまった。

▲鈴木貫太郎新監督(右端)を中心に一致団結して闘った帝塚山大

 鈴木監督は、1勝を挙げたことで、「まだ分からない」という気持ちもあったものの、正直なところ、残留濃厚という気持ちもあったと言う。「濃厚、ではダメですね」と、勝負の世界の掟である「下駄をはくまで分からない」を実感。選手には「まだ分からないぞ」とは伝えてはいたが、1勝を挙げたことによる安堵感はあったという。

 残留のためにもう1勝を挙げなければならない状況になり、「なんでまた苦労しなければならないの?」という気持ちとの闘いに面したが、「そこから、気力を振り絞って最後の試合に臨んでくれました」と言う。

3度壁にはね返されたが、着実な進歩は見せていた

 中京学院大との一戦は、第1試合を落とすスタート。ここで61kg級の澤田涼之介(2年)がテクニカルスペリオリティで勝って流れを変えた。グレコローマンを中心にやっている選手だが、大事な一戦に臨むにあたり、「ボクが出ます。任せてください」と直訴してきたそうだ。鈴木監督は、同級の選手の中で最上級生という理由もあることながら、自分から「出る」と言ってきた気迫にかけて起用を決め、見事に役目を果たしてくれた。

▲7・8位決定戦、出場志願の澤田涼之介(赤)が勝って試合の流れを引き戻した

 その後、チームスコアが2-2、3-3となったものの、最後は125kg級に起用された86kg級西日本学生王者の升田康太(3年)が、125kg級で新人選手権2位の選手をテクニカルスペリオリティで破って勝負を決めてくれた。鈴木監督は「みんなが結集してやってくれた」と、全選手の踏ん張りを褒め称えた。

 4度目の正直での一部残留。これまでの3度は、チームとしてはすべて4戦4敗だったが、個々の試合は2012年春季=4勝(2-5、0-7、0-7、2-5)、2024年春季=6勝(1-6、1-6、1-6、3-4)、昨年春季=8勝(2-5、2-5、2-5、2-5)と、着実な進歩を見せていた。

 今大会はチームとして2勝を挙げ、勝ち試合数は11勝(2-5、4-3、1-6、4-3)をあげての二部Uターン回避。周南公立大のつまずきの影響で最後に大変な試合をすることになったが、終わってみれば、いい経験ができたことになる。「神は乗り越えられる試練しか与えない」と言われるが、勝利の女神は、今の帝塚山には試練を乗り越えられる力があると判断し、貴重な経験の場を与えてくれたのだろう。

▲86kg級の選手ながら125kg級に出場した升田康太。体格の差をものともせずに勝ち、チームの一部残留を決めた

豊富なコーチ陣が躍進を支えた

 同監督は「コーチがそろったのが大きい」と振り返る。昨年までは主に石山直樹部長(当時監督)と自分の2人での指導が主だったが、月坂正吉コーチ、佐藤将章コーチ、吉田アミン・コーチ、沼田義次コーチが加わり、代わる代わるに顔を出してアドバイスしてくれるようになった(関連記事)。「選手の気持ちをうまく乗せてくれます。指導が楽になりました。持ちベくものはコーチングスタッフですね」と感謝する。

 壁を乗り越えて残留し、新たな段階に入った。「残っただけではなく、もっといい成績を目指して練習していきたい」と話す鈴木監督は、スカウトにもこれまで以上に力を入れる腹積もり。三恵海運の支援によってオリンピック選手や全日本トップ選手が指導に来てくれることが広まっており、多くの高校から選手が来てくれるようになっている。

 一部リーグ定着によってその流れが加速すると予想。ターゲットを近畿圏だけでなく、全国に広めて有望な選手を集め、西日本の頂点を目指す闘いを始める。