(編集長=樋口郁夫)
アジア・オリンピック評議会(OCA)は5月3日、公式ウェブサイトで来年9~10月に名古屋市を中心に行われるアジア大会に、クリケットと総合格闘技(MMA)が追加されることを発表(関連記事)。MMAは「男子4階級、女子2階級」と発表した。
【お詫びと訂正】4月29日の「2026年名古屋アジア大会での総合格闘技(MMA)実施が正式決定」の記事にて、「男女各3階級」と記載しました。6階級実施との発表で、そう解釈しましたが、上記の通りに訂正します。
2026年愛知・名古屋アジア大会の組織委員会がMMA採用を決めたのは先月28日だが、今年2月に中国・ハルピンで行われたOCA理事会で、すでにMMA採用が承認されており、実施階級は下記通りとなっている。
男子モダン:60kg級、71kg級
男子トラディショナル:65kg級、77kg級
女子モダン:54kg級
女子トラディショナル:60kg級
「トラディショナル」と「モダン」の違いはユニフォーム。「トラディショナル」は、キャッチ、投げ、襟を使った技が可能な着衣(道着)で闘い、「モダン」は、ファイトショーツに、男子はノースリーブのラッシュガード、女性は長袖のラッシュガードを着用。
すべての競技者はマウスガード、少なくとも4オンス(0.11kg)のグローブ、すね当てを着用し、男子選手は股間保護のファウルカップ着用が義務化されている。
総合競技大会で初のMMA実施に、インドでは国技とも言えるクリケットとの同時採用に多くのメディアがこのニュースを取り挙げており、日本のMMAファイターの間でも歓迎の声があがっている。だが、アジア大会で実施されるMMAを考えた場合、日本の選手が参加して好成績を挙げられるか、というと未知数の部分が多い。ぞれ以前に、参加させられるかどうかも分からない状況と言えるかもしれない。
日本でアマチュアMMAをやっている団体といえば、修斗、パンクラス、DEEPなどがあり、国内最大規模の興行を打つRIZINもアマチュア大会を行っている。いずれも、RIZINや米国のUFC、アジアを中心に活動しているONE Championshipの“アマチュア版”といったところ。
今度のアジア大会で実施されるMMAは、2022年12月に設立されたアジア総合格闘技協会(AMMA=クリック)の実施するスタイル。AMMAはすでにOCAから認められている団体であり、「既存の国際MMA団体との提携は行わない」としている。
アジア大会のMMA実施を報じているスペイン系のテコンドー・サイトは、「OCAは加盟国に対し、AMMAに加盟することを求めることになる」との情報を報じている。
日本は、AMMAには加盟していない。現在、国内の総合格闘技を統括する団体が存在しないため、AMMAへの加盟することができるかどうか。加盟するにしても、どこか統括するのか不透明。日本レスリング協会の傘下連盟に「格闘競技連盟」があり、これまでアジア大会で実施されるものの日本オリンピック委員会(JOC)に加盟していない競技団体の選手を同協会経由で派遣したことがある。
しかし現在、同団体は形骸化しており、3月末に新会長が決まって再建を目指しているものの、役員の決定はこれからで、国内のアマチュア総合格闘技団体を統括、あるいは支援する体制にはなっていない。
1998年アジア大会(タイ)でムエタイ(タイ式ボクシング)がエキシビションながら採用されたとき、JOCは派遣に向けて動いた。しかし、乱立するキックボクシング団体をまとめることができず、派遣なしになった経緯がある。今回も、そういったケースになる可能性はある。
AMMAが設立されてからわずか2年1ヶ月でアジア大会の実施競技となったのは、アジアにおけるMMAの急激な発展が背景にあることは間違いない。だが、総合競技大会で実施される初のMMAに、MMAが盛んに行われている地元の日本からの「参加なし」という事態も十分に考えられる。参加したとしても、AMMAの大会への出場経験がなく、ルールに不慣れな日本選手が勝ち抜けるものかどうか疑問符がつくのが現状だ。