2025.04.21

【2025年ジュニアクイーンズカップ・特集】女性審判員だけで運営、「一緒に成長していきたい」(古里愛里審判員)

 2025年ジュニアクイーンズカップは、女性審判員だけの構成で行われた。昨年のこの大会も女性審判の方が多かったが、今年は女性のみ。アドバイザー役として、世界レスリング連盟(UWW)のインストラクターである小池邦徳審判員(天理大GM)、1S審判の本田原明審判員(自衛隊)、関東高体連レスリング専門部の鈴木俊英審判長(千葉・関宿高教)が参加したが、各マットでのレフェリー、ジャッジ、チェアマンはすべて女性審判員。チャレンジのときの説明アナウンスは、古里愛里・大会審判長(茨城・東洋大附牛久高教)が務めた。

▲女性審判だけで開催された2025年ジュニアクイーンズカップ=提供・古里愛里

 2023年の西日本学生春季リーグ戦や同年の全日本学生選手権は、1面マットのみ女性審判の構成で実施された。女性審判員を集めるのが難しく、1面が限度だったのが現状。だが、短期間で人数が増え、あるいは都合を最優先させて参加してくれる審判員が増え、昨年10月の全日本女子オープン選手権(静岡・焼津市)で「女性のみの審判の大会」が実現。今回が2大会目だと言う。

 古里審判長は「女性審判の数は、毎年、確実に増えてきています」と話す。ルールにのっとって裁くのが審判員の職務なので、判定自体は男女混合であろうが女性だけであろうが、「変わらない。変わってはならない」と言うが、ベテランの男性審判員がいれば、無意識のうちにも頼り、従ってしまうだろう。自立心を養って一本立ちしてもらう意味で、女性審判員だけの大会は必要なこと。

▲3面マットとも女性審判が躍動した

初日の試合後と最終日の試合前に技術指導を実施

 何よりも、女性審判員に対するアピールになる。何年かして、女性審判員の存在が普通になれば記事にもならないだろうが、現段階では、そうした大会があって、それを知らせることで同志の存在を意識する。大会に参加するため何ヶ月も前から都合をつける女性審判員が増えるはず。

 古里審判長は「審判を続けるモチベーションになると思います」と言う。仕事や家庭の都合を調整して参加している人が大勢いると分かれば、「協力したい」と思う人も出てくるわけで、「多くの女性審判員に、一緒に成長していきたい、という気持ちを持ってほしい」と訴えた。

 もちろん、数をそろえれば、それでいいものではなく、大会のグレードに合わせた質の向上も必要。今回は、初日の試合後にマット上で小池審判員が実技講習を実施し、チャレンジが多かった点などを確認。最終日の朝にも、会議室でこれまでより詳しい撮影映像を導入したチャレンジの際のビデオを全員で視聴。全員が同じ状況で同じ判断ができるような確認をしてマットに向かった。技術向上への取り組みも余念がない。

▲初日の試合後に行われた小池邦徳審判員による技術指導=提供・古里愛里

▲最終日の試合前に行われた技術研究=提供・古里愛里

大勢の同志をつくり、世界の舞台で活躍を

 古里審判員長は今年初め、オリンピックを裁く資格のある国際1S審判員に昇格。3月下旬のアジア選手権(ヨルダン)で、1S審判としてのデビューを果たしたばかり。「去年のアジア選手権(キルギス)より落ち着いて裁くことができたと思います」と振り返り、成長を感じる一方、「まだ課題も多くありました。国内でやっていることを国際舞台でできるようにしたい」という反省もあった。

 昇格を知らされたときは、正直なところ「実感がなかった」と言う。アジア選手権という舞台に参加して、昇格したことを現実のものとして受け止められ、「頑張ろう、という気持ちが出てきました」と振り返る。次の国際舞台の参加は未定だが、日本女性初のオリンピック参加へ向けてスタートした。

 自身の飛躍を目指すだけではなく、女性審判員の普及と育成の責任者的な立場になったわけだが、これは先駆者としてやむをえない流れだろう。大勢の同志をつくり、国際舞台で遅れている日本の女性審判員の活躍推進に尽力することが望まれる。

▲チャレンジによるビデオチェックのあと、館内に説明する古里審判長