スロバキア・ブラティスラバで行なわれた2025年欧州選手権の男子グレコローマン72kg級で、決勝の判定に疑義が生じ、「両者優勝」という結果になった。
世界レスリング連盟(UWW)のウェブサイトには、「スコアボードの不具合」とのみ記載されて詳細が伝わらなかったが、動画などで判明したミスの理由は、「これが国際審判か」と思わせるような低次元のミス。同時に、「セコンドは何をやっていたのか」と責められてもおかしくない状況であることが分かった。
経緯は次の通り。バンテ・レバイ(ハンガリー=赤)とイブラヒム・ガネム(フランス=青)の決勝で、お互いにに1回ずつパッシビティが科せられ、ガネムが4-1とリード。ラスト52秒で、審判団はガネムにパッシビティ(消極性)を与え(両者で通算3回目)、レバイのグラウンドの攻撃によって試合が再開された。
通算3回目以降のパッシビティは、受けた選手がパーテールポジションの防御で試合が再開されるものの(攻撃側がスタンドを選択した場合は、スタンド戦で試合再開)、失点はない。
《国際レスリングルール・第46条-パッシビティの適用》 =前略= ⚫ 1回目のパッシビティ(どちらの選手に関係なく)の適用は、積極的な選手が1点を 獲得し、スタンドまたはパーテレのいずれかを選択することができる。(P) ⚫2回目のパッシビティ(どちら選手に関係なく)の適用は、積極的な選手が1点を獲 得し、スタンドまたはパーテレのいずれかを選択することができる。(P) ⚫ 3回目以降のパッシビティ(どちら選手に関係なく)の適用では、試合を止め積極的な 選手がスタンドまたはパーテレのいずれかを選択できる。積極的な選手に1点は与 えられない。(P) |
しかし、スコアボードには誤って4-2と表示され、レバイはその後、2ポイントを獲得。スコアは4-4で終了。レバイがラストポイント獲得で勝者とされた。
フランス陣営はスコアボードの誤りに強く抗議し、UWWは再検討の結果、ミスを認めるとともに、勝敗を覆すわけにはいかず、両者優勝という苦肉の策をとった。
「通算3度目以降のパッシビティには、得点はからまない」というグレコローマンの基本ルールを、まさか国際審判員が知らなかったわけではあるまい。電光掲示板の係が間違って1点を加えたとしても、3審判のだれかが気がついて是正しなければならないケース。
フランス陣営は電光掲示板の得点を見ていなかったのだろうか。2-4と表記された段階で、すぐに抗議し、訂正させるべきだった。後になって、指を3本立てて「(相手は)3点だ」と抗議していたようだが、なぜそのときに抗議しなかったのか。
選手は興奮して状況が理解できなかったとしても、セコンドは冷静にポイントを計算しなければならないはず。電光掲示板の係のミスであっても、そのまま試合が進んでしまうと、勝敗が逆になってしまうケースがあることを、セコンドはしっかり認識するべきだ。
「19歳(バンテ・レバイ=ハンガリー)の欧州王者誕生」というニュースは、「本当なら相手の勝ちだった」という“オチ”がついた結果となった。
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