(文=布施鋼治)
53㎏級の自分のレスリングを超えろ-。
2025年JOC杯ジュニアクイーンズカップ選手権・最終日は4月13日、東京・東京武道館で行われ、パリ・オリンピック53kg級金メダルの藤波朱理(日体大)がU23-57kg級に出場。この階級での初の闘いに挑み、2試合ともテクニカルスペリオリティで勝って優勝。試合後は満面の笑みを浮かべた。
「57㎏級のスタートの大会ということで、いい緊張感を持ちながら、この階級のパワーや調整方法を確かめることができました」
初めて闘う階級ということで、準決勝、決勝ともスタンドレスリングにこだわりながら闘っているように見えた。「グラウンドで(アンクルホールドやローリングを駆使して)すぐ試合を終わらせるのではなく、(最初は)しっかりとスタンドで57㎏級を感じたい部分があった」
山下叶夢(東洋大)との決勝ではケンカ四つ(構えたときの前に出す足が違い、ぶつかる形になること)、や片足タックルにこだわった試合運びを見せた。「57㎏級はケンカ四つとなる選手が多いので、差しの練習もしてきたけど、そこはうまくいかない部分だった」
53㎏級から57㎏級への階級変更は非オリンピック階級の55㎏級を飛び越えての階級アップということになる。4㎏の体重差だけではなく、対戦相手の身長もおのずと高くなる。そうすれば、タックルの打点が高くなるケースが出てくる。
藤波は「しっかりと組み手や間合いの感覚の違いを実感したかった。やっぱり(身長が)高くなる分入りやすかったけど、そのあとの処理の部分で手こずることが多かった」と振り返った。収穫だけではなく、課題を挙げるところは、いかにも過去の栄光にあぐらをかかない藤波らしいと思った。
「パリ・オリンピックは過去のこと。(ロサンゼルスに向けた)次の勝負はもう始まっている。でも、その前に過去の自分を超える形で進化していきたい」
そのために「レスリングの幅を広げていきたい」と言う。「パリ前は自分がやる技を決めて、それを強化していた。パリの後は、自分の強みをいかしつつ、いろいろなパターンでのポイント力を高めていきたい」
スタイルチェンジは発展途上。藤波は「少し出せた部分とまだまだ詰めが甘い自分があった」と語る。6月の明治杯全日本選抜選手権(19~22日、東京体育館)では、さらにバージョンアップした藤波朱理を見せられるか。