昨年12月に全日本チャンピオンに輝き、今年の2度の国際大会(UWWランキング大会、アジア選手権)を制している尾西桜(日体大)がU20-59kg級で優勝。スタンドの攻防は卓越した技術を駆使し、グラウンドでは決勝で仕掛けた唯一のローリングは決まらなかったが、全試合を通じてアンクルホールドがさえ、あらためて強さを見せつけた。
初戦(2回戦)は大学生選手を相手に、わずか32秒での勝利。しかし準決勝の木村美海(千葉・日体大柏高=昨年の全日本女子オープン選手権U17-57kg級優勝)、決勝の野口紗英(北海道・帯広北高=昨年のU17世界選手権61kg級2位)の2人の高校生選手相手には、やや慎重な闘いとなり、“秒殺勝利”というわけにはいかなかった。
特に決勝は4失点となるタックル返しを受けてしまい、3-4とリードされて第2ピリオドへもつれた。「タックルの処理がよくなかったです。課題のひとつでしたが、そこをやられてしまった、という感じです」と振り返る。それでも、最後はテクニカルスペリオリティとフォールで勝つあたりはアジア・チャンピオンの実力だろう。
伸び盛りの高校選手が相手で、「プレッシャーがちょっと…、いえ、かなりありました」と、追われる立場になって感じる“敵”があったほか、ヨルダンで行われたアジア選手権から移動を含めて約2週間の間隔での試合出場に、体調維持や気持ちの切り替えが難しかったそうだ。
初めてのシニアのアジア選手権は、自分にとって「大舞台」。まして、決勝は北朝鮮選手と大激闘の末の優勝。やり遂げた安心感や充実感、「国内のU20では絶対に勝たなければならない」という使命感などが絡み合い、「どういうふうに気持ちを切り替えればいいのか、ということに苦戦しました」と言う。
それでも周囲のアドバイスや支援があり、気持ちを高めて大会を迎えることができた。「優勝できてよかったです」とにっこり。
昨年のU20世界選手権は、全4試合を無失点のテクニカルスペリオリティ勝ちでの優勝。最長試合時間が1分17秒で、1試合平均は54秒という圧勝続きだった。それだけに、今年はU20世界2連覇は言うに及ばず、昨年は国内予選のプレーオフで敗れて代表を逃したシニア世界選手権への出場、そして優勝という大きな目標がある。
そのためには、6月の明治杯全日本選抜選手権を勝ち、8月中旬のU20世界選手権(ブルガリア)を経て9月中旬のシニア選手権(クロアチア)へ挑むことになる。大舞台が続くが「ハードスケジュールは覚悟しています」と気合を入れる。
残念なことは、U20世界選手権と全日本学生選手権(インカレ)が同時期にあるので、昨年1年生チャンピオンに輝き、女子では2014年の入江ゆき(九州共立大)以来生まれていない「インカレ4連覇」という目標ができたのに、断念せざるをないこと。この話になると、ちょっぴり無念そうな表情だったが、勝利の女神の「2つの世界選手権に専念しなさい」という配剤なのではないか。
もし8月下旬にインカレがあったとしても、気持ちと体調の問題でスルーするべきケースだろう。国内での記録達成より、W世界チャンピオン! 今夏、ブルガリアとクロアチアの両国でウィニングランが見られるか。