2025年の全米大学(NCAA)選手権が終わったばかりだが、米国のレスリング専門サイト「Flo WRESTLING」は早くも来季の展望を掲載。2021年東京オリンピック金メダリストのデービッド・テーラーが指導陣に加わって今季は3位だったオクラホマ州立大の133ポンド(60.3kg)級に坂本輪(東京・自由ヶ丘学園高卒)の名を挙げ、米国での本格デビューを果たす同選手への高い期待を表した。
優勝したペンシルベニア州立大の同級には、昨年の61kg級世界王者の小野正之助(山梨学院大を休学)の出場が見込まれるので、2万人近い観客の前で日本選手同士が闘う可能性が出てきた。NCAA選手権で日本選手同士が闘うとなれば史上初。
オクラホマ州立大はNCAAレスリングで一世を風靡(ふうび)したチーム。日本からも上武洋次郎(NCAA3度優勝)や八田忠朗(同1度優勝)らが在籍。米国史上最高のレスラーと言われたジョン・スミス(1988・92年オリンピック優勝)も活躍したが、2006年にスミス監督のもとで34度目の優勝を遂げたあと、ペンシルベニア州立大の台頭で優勝から見離されている。
同サイトは、オクラホマ州立大の今季の成績は最終学年だった選手の力であり、下級生が獲得したポイントは28点と指摘。このままでは来季は厳しいとする一方、優秀な移籍選手や新人選手を獲得したことで、優勝候補になりうるチームと予想。期待の新人の一人に坂本の名を挙げた。
坂本は今季、NCAAの試合に出られないレッドシャーツ・イヤーの選手だったが、2月に規制を受けないアイオワ大との対抗戦に出場。その試合は負けたものの、同サイトのJD・レイダー記者は「坂本の試合に感銘を受けた」と記述。カレッジスタイルに適応する今後に期待した。
▲日本選手が2人優勝した1965年のオクラホマ州立大チーム。前列右端は八田忠朗氏、その左2人目が上武洋次郎氏。後列右から2人目は、のちのNWA世界ヘビー級王者で昭和のプロレス・ファンで知らない人はいないジャック・ブリスコ氏=八田忠朗氏提供
NCAA選手権は3月の下旬に3日間6セッションで行われ、2015年のセントルイス大会の最終セッションは1万9,715人、2016年ニューヨーク大会は1万9,270人、2017年セントルイス大会は1万9,657人、2018年クリーブランド大会は1万9,776人の観客が集まるなど、各セッション1万5,000人以上の観客を集める一大イベント。かつては日本選手が優勝するなどしたが、1996年の阿部三子郎(ペンシルベニア州立大)を最後に途絶えていた。
日本レスリングの世界進出という“ビッグバン”(宇宙発生の原因となった大爆発に例え、大きなエネルギーで時代が変わること)が近づいているか。
年 | 階 級 | 選 手 名 | 所 属 大 学 |
1962年 | 123ポンド(55.8kg)級 | 八田正朗 | オクラホマ州立大 |
1964年 | 130ポンド(59.0kg)級 | 上武洋次郎 | オクラホマ州立大 |
1965年 | 115ポンド(52.2kg)級 | 八田忠朗 | オクラホマ州立大 |
〃 | 130ポンド(59.0kg)級 | 上武洋次郎 | オクラホマ州立大 |
1966年 | 130ポンド(59.0kg)級 | 上武洋次郎 | オクラホマ州立大 |
1971年 | 126ポンド(57.2kg)級 | 藤田義朗 | オクラホマ州立大 |
1996年 | 126ポンド(57.2kg)級 | 阿部三子郎 | ペンシルベニア州立大 |