2025.04.03NEW

【2025年全国高校選抜大会・特集】15年ぶりの出場、初心者主体のチームで1勝をマーク…焼津中央(静岡)

 15年ぶりの出場となった焼津中央(静岡)が、1回戦でノースアジア大明桜(秋田)を5ー2で撃破し、18年ぶりの“全国1勝”をマーク。その勢いで上位進出を目指したが、2回戦で高岡向陵(富山)に敗れ、全国の厚い壁にぶつかった。

 統計があるわけではないが、公立の普通科高校で全国大会へ出場するチームは、少ないとは言えなくとも、多くはない。まして7人の部員のうち5人が高校入学後にレスリングを始めた選手。同県には学校対抗戦、個人戦を問わず全国大会の上位の常連と言える飛龍があり、全国大会への出場は厳しいのが現実だ。しかし昨秋の東海予選で3位に入り、悲願を達成した。

▲母校の監督として初めて全国大会出場を果たした長谷川拓也監督

 指揮官は、弟が同校の卒業生でありオリンピック選手(長谷川恒平=現青山学院大監督)という長谷川拓也監督。「レスリング経験者がそろう高校ではありません。構えから教えるところからスタートです」という状況を乗り越えての全国大会。幸いだったのは、無理に引き入れたのではなく、「将来はプロレスに行きたい」という選手を含めてレスリングに興味を持っていた選手がそろったこと。

 気持ちのある選手の指導はやりがいがある。キッズ・レスリング経験者は、選手によっては変なくせを持つ場合もあるが、「真っ白な状態から基本をしっかりと教えることができた」と振り返る。

勝つことより、自分の成長を試す気持ちで臨む

 5人の初心者選手の中学時代の部活動歴は、テニス、バスケットボール、サッカー、パソコン、空手。この中から3人の2年生選手(4月から3年生)が1回戦で勝ち、チームの勝利に貢献した。「着実に力をつけています」と、選手の頑張りを評価した。

▲中学時代はサッカー選手。プロレスラーを目指してレスリングを始めた澤井颯汰がチームの3勝目をマーク

 高校入学後にレスリング始めた場合、キッズ・レスリング経験者との大きな実力差ぶつかり、「とても勝てない」という気持ちになるはず。まして静岡県は11のキッズ・チームがあり、他県から飛龍高に来る選手もいる。大きな壁が存在したことだろう。

 長谷川監督は「根本的に、自分が成長すればいい、という気持ちを持たせて取り組ませています」と言う。以前できなかったことができるようになった、以前より筋肉がついた、などを繰り返していけば、「それは成功、と言えると思います。勝ち負けだけが判断基準ではありません」と言う。その意味でも、「今大会は成功と言えると思います」と強調した。

 勝つことを放棄するという意味ではなく、勝つことに執着せず自分の成長を試す、という気持ちを持つと、よけいなプレッシャーもかからず、伸び伸びと闘えるという利点がある。同監督は「プレッシャーがかかることは何も言いませんでした。私自身にもプレッシャーはまったくなかったです」と話し、1回戦の勝因はそのあたりと考えている。

▲中学時代はパソコン部という80kg級・吉井大輝の基本に忠実なローリングに、長谷川監督も満足そう。4勝目を挙げてチームの勝利を決めた

「選手の思いをかなえてやりたい、という気持ち」に公立も私立もない!

 長谷川監督は同校のOBであり、中大を経て地元に高校教員として戻ってきた。焼津水産高の監督時代に、昨年の全日本選抜選手権優勝の秋山拓未(現自衛隊)や2022年全日本学生選手権2位の山口叶汰(当時神奈川大)に教えている。2017年のこの大会では、その1年違いの先輩後輩の2選手がともに55kg級で3位入賞を果たすなど、強豪選手を育てた。学校対抗戦も「2回ある」と言う(1回は震災で中止)。

 7年前に母校の焼津中央高へ赴任し、母校の監督として今回が学校対抗戦で初めての全国大会。「母校を全国大会に出したい、という気持ちは、ずっとありましたね」と言う。飛龍や焼津水産の壁があったことでなかなか実現できなかったが、よくやく実現し、今後につなげたいところだ。

▲初心者の中で唯一の格闘技経験者(空手)の125kg級・横地悠樹がフォールで最後を締めた

 国公立大学への進学率も高いチームの全国大会出場で、地元新聞に「公立旋風を巻き起こす」という記事が載り、注目された。だが、同監督の気持ちの中に「公立、私立」という区分けはないと言う。

 確かに、私立高校はスポーツ推薦制度や合宿所があったりで、強くなるための条件がそろっていることが多いだろうが、「自分は公立高校の教員となり、指導者になったわけです。与えられたチームを強くする、選手の思いをかなえてやりたい、という気持ちでやっています」と強調。その気持ちは「どのチームの監督も同じだと思います」と言う。

 その中から、弟のようにオリンピックへ行く選手も生まれるだろうし、レスリングを離れて社会でしっかりやっていく選手も出る。指導に公立も私立もない。全力で選手を育て、成長を見守ることが大事だ。

 インターハイは開催県を除いて各都道府県から1チーム、各階級1選手しか出られないので、出場に大きな壁ができる状況となるが、「それまでの大会、すべてに出て、最後までやり切って、自分のレベルが上がったことを実感できるようにしてほしい」と、成長を期待した。