JOC杯U23全日本選手権の男子フリースタイル65kg級は、昨年の全日本学生選手権(インカレ)決勝と同じ顔合わせとなり、そのときに勝った西内悠人(日体大)が荻野海志(山梨学院大)を破って優勝。世界挑戦のキップを手にした。
最後にものを言うのは「攻める姿勢」と思い、その気持ちを持ち続けられたことが「勝因だと思います」と振り返った。荻野には、その勝利の3ヶ月後にあった全日本大学選手権・準決勝でリベンジされて優勝を逃していた。その後の全日本選手権ではインカレで勝っていた大学の先輩の田南部魁星に負けて、やはり優勝できなかった。「負けが続いていた。課題を克服して、それらの負けを払拭する試合ができたと思います」と、安堵の表情を浮かべた。
インカレは階級を上げて初めての大会。それで選手数が多い階級(79選手出場)を制したのは非凡さのなせる業だが、「チャレンジャーという気持ちでした」と、無欲さが勝因だったもよう。勝ち続けることの大変さを経験し、今大会は多少の重圧があったようだが、国際大会につながる試合であり、「世界で勝つのは自分だ」という気持ちを持って闘えたことも、優勝につながった要因と分析した。
2022年にU20世界選手権61kg級で勝ち、日本の高校生として初めてU20を制する快挙を達成。翌23年は57kg級に下げて優勝。日本男子選手で初めて2度優勝を成し遂げた。しかし昨年は、予選でもあるJOC杯U20-61kg級決勝で小野正之助(当時山梨学院大)に敗れ、世界への道が閉ざされた。
その代わりにU20アジア選手権へ出場。4試合に快勝して日本に2019年以来の金メダルをもたらしたが、「世界3連覇を目指していました。世界へ出たかったので、悔しさの残る大会でもありました」と振り返った。
今大会で、1世代上のU23で2年ぶりに世界挑戦をつかみ取った。「(出場する日本選手や、出場する外国選手を含めて)最年少になるかもしれませんが、それであっても優勝を狙っていきます」ときっぱり。17歳のときにU20世界を制した経験からして、「年齢は関係ない」という気持ちを持っており、年上の外国選手が相手でも「怖くはありません」と語気を強めた。
U23世界挑戦の前には、明治杯全日本選抜選手権(6月19~22日、東京体育館)があり、シニアの世界選手権代表へ向けて気持ちを切り替える必要がある。今回勝った荻野のほか、田南部、同期の細川周(U20-65kg級世界2位)に加え、オリンピック王者の清岡幸大郎が復帰出場するとの情報があり、簡単に勝てる状況ではない。
清岡は高知南高校の先輩であり、「ずっと尊敬していた先輩」と言う。しかし、「尊敬しているだけでは勝てない。ライバル、という気持ちで明治杯は勝ちに行きます」ときっぱり。昨年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝を前にして大谷翔平選手がチームメートに言った名言「きょう1日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう」に相通じる言葉。マットの上では、尊敬や憧れは要らない。
昨年夏の学生王座奪取のあと、痛恨の思いが続いた2024年。「あの悔しい思いをもとに練習し、成長できている自分を実感しています。それを発揮する場が明治杯だと思っています」と話し、今大会の優勝を機に、一気にシニアのビッグタイトルも目指す。