2025.03.21

【特集】女子の普及と発展に貢献しつつ、家族の近くを選びました…オリンピック5度出場のマリア・スタドニク(アゼルバイジャン)

 女子で唯一オリンピック5度連続出場を果たした50kg級のマリア・スタドニク(アゼルバイジャン=36歳)がアゼルバイジャン女子チームのコーディネーターに就任。地元メディアのインタビューに答え、活動内容を明らかにした。

▲2019年世界選手権(カザフスタン)で2度目の優勝を成し遂げたマリア・スタドニク(アゼルバイジャン)


--あなたの仕事内容について少し教えてください。

スタドニク アゼルバイジャンの女子レスリングの全体的な発展です。これには、普及、競技会の開催、コーチの誘致、保護者との連携、女子レスリングとは何かの説明などが含まれます。私たちの国はイスラム教徒が多数を占めており、親たちは女の子をスポーツ、特にレスリングに行かせることに消極的です。私たちはこの状況を変えるために学校と積極的に協力しています。さらに、キッズチームとシニアチームの連係の調整も行っており、トレーニング計画、トレーニングキャンプ、競技会、その他の組織的な事項を調整しています。

--コーチとは違うのですね。

スタドニク 私がコーチになれば、アゼルバイジャンの女子レスリングの世界的な発展に貢献できなくなると思いました。私はもっと大きな視野に立ち、代表チームだけでなく、全体の発展のために役立ちたいと思っています。それに、私には2人の子供がいるので、スポーツ選手だった頃のように頻繁に遠征したくはないのです。コーチはアスリートと同じで、常に家を離れることになります。私は女子レスリングの普及と発展に貢献しつつ、家族と近くにいられる道を選びました。

--活動してみて、このポジションはいかがですか?

スタドニク これまでやってきたことと全く異なる面があり、異なるシステムです。競技はすべてが単純で、勝った者がチャンピオンになります。今は、(勝った負けただけではない)多くの面があります。新しい現実に慣れつつあるところです。簡単だとは言いませんが、適応しようと努力しています。

--最も難しいことは何ですか?

スタドニク 私には私自身のビジョンがありますが、異なる見解を持つ人がたくさんいるので、妥協点を見つける必要があることです。選手時代は、何をすべきか分かっていて、自分で決断していました。今は状況が違います。決定は組織で行われ、それまでに多くの議論が行われます。新しいペースに適応する必要があると思います。

--アゼルバイジャンの新世代の女子レスリングを、どのように評価しますか?

スタドニク 女子選手はいるし、可能性もありますが、コーチが不足しています。私が2007年にアゼルバイジャンに来た時は(注=ウクライナから国籍変更)、女子レスリングはほとんど存在しませんでした。今では、国際大会に参加し成績を出している選手も多くいます。私の例が、このスポーツに対する親の考えを変えるのに役立ったと思います。だれもが、私が闘いながら家族を作り、子供を産んだことを知っています。レスリングは私の人生に支障をきたしませんでした。

▲パリ・オリンピックは納得できない判定でメダルに手が届かなかった


 同選手は2008年北京大会から2024年パリ大会まで5度のオリンピックに出場。2008年北京大会から順に「銅、銀、銀、銅」のメダルを獲得。女子初の5度目の出場となったパリ大会で5個目のメダルを目指したが、2回戦でオトゴンジャルガル・ドルゴルジャフ(モンゴル)に敗れ、敗者復活戦に回れずメダル獲得はならなかった。

 世界選手権では、2009年と2019年の優勝を含めて6個のメダルを獲得。2010年に第一子を出産し、当時は珍しかった“ママさん選手”の世界トップ選手として注目を浴びた。他に、欧州選手権10回優勝、欧州大会2度優勝。