2025.03.16

本田原明審判員(自衛隊)が復帰、古里愛里審判員(茨城・東洋大牛久中高教)が日本女性で初昇格…UWW1S審判員

 世界レスリング連盟(UWW)の2025年国際審判員が発表され、オリンピックを裁く資格となる1S級に本田原明審判員(自衛隊)が復帰し、古里愛里審判員(茨城・東洋大牛久中高教)が初昇格した。

 古里審判員は日本女性で初の最高位審判員へ。1981年に日本で初の女性レフェリーが誕生(大阪・吹田市民教室の前田佳子さん)してから44年、1994年に増田早苗さんが初めて国際審判になってから31年のときを経て達成した。

▲日本女性で初めて国際審判の最高位ライセンスを獲得した古里愛里審判員=2024年アジア選手権(撮影・保高幸子)

 UWWインストラクターでもある小池邦徳審判員(天理大GM)と、2023年1月に昇格した増田莊史審判員(香川・多度津高教)が引き続き1S級審判へ。同級審判員だった沖山功・日本協会審判委員長は名誉審判となったので、日本の1S級審判員は4人となった。

 本田原審判員は2019年に1S級に昇格したものの、2021年10月の世界選手権(ノルウェー)で「ミスをしてしまって」(本人談)降格となり、3年ぶりの復帰となった。現在、UWW審判を管理しているインストラクターが若手を数多く起用しているので、「もう自分の出番はない」と思い、この3年間は国際大会へ参加しつつも、国内で若手審判員の育成に力を注いでいたと言う。

 昨年12月の天皇杯全日本選手権のとき、沖山審判委員長から昇格の可能性があるとき聞き、「マジか! と思った。最初の昇格のときは『頑張ろう』だったんですけどね」と笑う。同委員長から「実力がなければ上がれない。日本を引っ張っていってほしい」と言われ、「協会にもお世話になっているし、自分から降りるわけにはいかない」と重責を引き受けることを決意。

 引き受けた以上は2028年ロサンゼルス・オリンピックを目指すが、厳しい世界であることを知っているので「不安の方が大きい」と言う。復帰後の初参加となる今月下旬のアジア選手権(ヨルダン)は、古里審判員、増田審判員とともに参加する。「(初昇格の)古里さんは自分より緊張していると思う。自分がしっかりやらなければならない」と覚悟を決め、1S級再デビュー戦へ臨む。

▲再び国際1S級審判となった本田原明審判員=2017年U23世界選手権(撮影・矢吹建夫)

「今は重圧の方が大きいです」…古里愛里審判員

 古里審判員は「1S昇格のうれしさは、もちろんありますが、正直なところ今は重圧の方が大きいです」とコメント。昨年4月に日本女性で初めてのアジア選手権(キルギス)に参加したが、「プレッシャーに耐えられず、いいレフェリングができなかったことが、この1年ずっと忘れられませんでした」と言う。

 だが、8月のU17世界選手権(ヨルダン)に参加して無難にこなし、これらの活動が評価されての昇格。「国内の大会にもたくさん参加させていただき、この1年間、経験してきたことを元に、今度のアジア選手権は落ち着いて大会に挑みたいと思います」という気持ちで、ヨルダンへ向かう。

 なお、1級へ小塚英晃審判員(愛知・犬山高教)、長谷川拓也審判員(静岡・焼津中央高教)、藪中審判員(和歌山・新宮高教)の3人が上がり(同級は計6人)、2級へ横山悠香審判員(大阪・大阪キリスト教短大教)が昇格(同5人)。3級に斎川哲克審判員(栃木・宇都宮商高教)が加わった(同4人)。ビーチの3級へ増田審判員(前述)、保坂和哉審判員(山梨・農林高教)が選出された。

 横山審判員も3級から2級へ昇格したものの、女性審判員の数は依然として2人。国際オリンピック委員会(IOC)世界レスリング連盟(UWW)が目指す男女同数には遠いので、女性審判員の育成が引き続き必要な状況となっている。